13 April 2020

ささやかなディテールから母の人生を浮かび上がらせる、ポール・グラハム新刊『MOTHER』

主なテーマは人はいつか死ぬということ、人生の最期とはどういうことかをゆっくりと解き明かすこと。

13 April 2020

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MOTHER

ハッセルブラッド国際写真賞をはじめ多くの受賞歴をもち、またそのキャリアにおいて20冊以上の写真集を出版してきたイギリス人写真家、ポール・グラハムの最新写真集『MOTHER』は、養護施設で暮らす年老いた母親が椅子に座っている姿をとらえたポートレイト・シリーズ。

印象派のホイッスラーから、フロイトの孫にして戦後ポートレイト画の代表であるルシアン・フロイド、セザンヌにホックニー、新古典主義の巨匠アングル、そしてゴーギャンと、芸術家が自身の母親を描くことは美術史の一つの伝統となっている。残酷なほど忠実に母親を描写したデューラーは、「最も小さな皺や血管でさえも、決しておろそかにしてはならない」と述べた。グラハムのカメラはほとんど動かず、どのイメージにも目を閉じて眠る母親が写っている。花柄の花瓶、ピンクやラベンダー色のカーディガンなど、人生の終わりを思わせる優しい色彩が使われていて、たったひとつの窓から差し込む日の光は柔らかく自然で、安定している。観る者を「楽しませる」ことを全く意識していないこの写真群を見ていると、片方の目からもう片方の目へ、ほどけた糸からボタンへ、そして少しだけ外側にはねているひと房の髪へと、慎重に選ばれたフォーカスが微妙に移り変わっていることにやがて気が付く。その控えめなディテールを通じて、時間が静止したようなイメージの中に少しずつ衰えていく命の光が表現されている。

本作の主なテーマは、人はいつか死ぬということ、人生の最期とはどういうことかをゆっくりと解き明かすことである。それだけでなく、イメージの核には二重性がある。生と死、そして子どもと親という役割の交代―見守られてきた者が今度は見守る側になり、創られた者が創る者になるのである。

タイトル

『MOTHER』

出版社

MACK

出版年

2019年

価格

7,500円

仕様

ハードカバー/240mm×315mm/60ページ

URL

https://twelve-books.com/products/mother-by-paul-graham

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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