イギリス人フォトグラファー、ジャイルズ・プライスの作品集『RESTRICTED RESIDENCE』は、2011年、東日本大震災と津波に続き発生した福島第一原子力発電所事故による高濃度放射能に汚染された2つの街、浪江町と飯舘村に帰還した人々に迫る一作。
この地域における放射能の長期的な影響について一致した科学的見解は得られていないが、日本政府は2017年に非難指示区域の縮小を開始し、帰還する人々に賠償金を与えた。どちらの街も震災前は活気があり、10万人近くの人々が生活していたが、今では危険を顧みずに帰還した人々が数百人だけが住むばかりとなっている。原子炉は未だ修復されておらず、至るところに人が居住できない放射能のホットスポットが散らばっている。これらの地域は今後50年かそれ以上に渡り安全な状態にはならないとも言われている。清掃や再建に携わる労働者、医療従事者、事務職員、ほとんど客がいないためにこの地に残ることを条件に特別手当を会社から支給されているタクシー運転手、機械工、売ることができなくても殺すには忍びないと、放射能に汚染されている牛の世話をしている牧場主。本書に登場するのは、より良い未来に対する希望を抱いている普通の人たちである。
本作においてプライスは、医療や監視の現場で使われることが多い赤外線カメラを使用し浪江町と飯舘村の日常を独特な色彩で塗り替え、異世界のような風景として描き出した。環境問題に詳しいイギリス人作家、フレッド・ピアスによるエッセイとともに、放射線災害に影響を受けた人々が感じている表面からは分からないストレスを表現し、また同時に、人的な大災害が私たちの脆弱な環境に与える広範な影響について問題を投げかけている。
タイトル | 『RESTRICTED RESIDENCE』 |
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出版社 | |
出版年 | 2020年 |
価格 | 4,500円+tax |
仕様 | ソフトカバー/197mm×300mm/80ページ |
URL | https://www.twelve-books.com/products/restricted-residence-by-giles-price |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。