06 April 2021

見る見られるの束縛された関わりの中「私」はこの舞台の何処にいるのか?Ryu Ika写真集『The Second Seeing』

06 April 2021

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The Second Seeing

Ryu Ika写真集『The Second Seeing』が、赤々舎より刊行された。

中国内モンゴル出身のRyu Ikaは、2019年に第21回写真「1_WALL」グランプリを受賞し、翌年に個展「The Second Seeing」を開催。写真プリントとモニターを用いた大胆なインスタレーションは、さまざまな撮影地や被写体自体を飛び越えたイメージの関連性と律動に満ち、空間全体を劇場に見立て、その世界に充満する視線の中、観者の位置を鋭く問うものだった。

本書は、その展示から発展し、見る人を本という劇場に招き入れる。マンガ本のような手触りのページをめくるごとに、ユーモアと違和感が綯い交ぜとなった多様な登場人物を見る。反転する表裏やレイヤー、そこからの逸脱を見る。と思えば、不意に差し挟まれた顔の圧に曝され、その視線から逃れられない。登場人物は、ときにページの展開の中で互いを見、プリントされ折り畳まれ、目を閉じたり、臓器のように再構成されたりする―。

人は常に見られている。見られていない世界は存在しない。現代社会に張り巡らされる検閲や、見る見られるの関係性、さらにRyu Ikaは、「自分の中で『他人の目』という存在を分裂させて、常にこの自分の中にある『他人の目』に監視されている」とする。「第二の性」に対しての「第二の観察」。人間の有りようを根底から問い、さらにその上に、未知の存在を窺わせる。

故郷内モンゴル、留学先の日本やフランス、旅で出向いたエジプトなど、スナップで蒐集した現実の欠片にノイズをかけたり、出力紙に手を加え、現実からデータ、データから現実を行き来する。その中に打ち込まれる自分の意識を通して、写真を作品化する衝迫に本書は貫かれている。流動し、エネルギーが連関するこの世界という劇場。作家も見る人も、舞台の反射の光に照らされている。

タイトル

『The Second Seeing』

出版社

赤々舎

出版年

2021年

価格

5,000円+tax

仕様

ソフトカバー/297mm×223mm/292ページ

URL

http://www.akaaka.com/publishing/ryu-ika-thesecondseeing.html

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