2021年は誰の写真集を買おうかな?どんな作家に出会えるかな?とワクワクしてみませんか。国内の4つの書店に今年注目したい若手写真家の写真集3冊を教えてもらった。鍛え抜かれた審美眼で写真集をセレクトするお店だからこそ、それぞれが注目する理由があるはず。第1弾は新潟に店舗を構え写真集を中心に取り扱う、本屋兼ギャラリーのBOOKS f3。ギャラリーでの展示も精力的に行われ、店頭に並ぶ広い視野で選ばれた写真集のなかで一体どんな作家の写真集に注目するのだろうか。
セレクト・文=小倉快子(BOOKS f3オーナー)
赤木遥『車なんて知らない』
ZINEや写真集、展示だけでなく、ポストカードやレターセットなどさまざまな形で作品を発表している写真家・赤木遥。自費出版された本書は、中綴じの雑誌のようなフランクさと荒っぽさがあり、パラパラとめくりやすく手によく馴染む。カメラが切り取るのは車のある身近な風景だが、赤木にとって車は幼少期から乗り物酔いするため苦手意識があり、興味がなかったという。しかし、気がつけばそれを撮っていたということは、苦手ゆえ無意識に憧れがあるのかもしれない。車にはそれぞれ所有する人がいて、車が停められている周辺の環境に視線を移すと、そこに誰かの暮らしが見えてくるのも面白い。その時々の気持ちや興味で作られる作品がどんな形で提示されるか、今年も楽しみにしている。
タイトル | 赤木遥『車なんて知らない』 |
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出版社 | 私家版 |
価格 | 2,000円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/297mm×210mm/A3サイズのポスター付 |
URL |
小林茂太『cairn』
本書はアイスランドを1カ月旅した写真家・小林茂太の旅の軌跡を通して、「個」に向き合った写真集である。新婚旅行で初めて訪れたアイスランド。子どもを授かった翌年、今度はひとり遠くから見ていた山々へテントを担ぎ、足を踏み入れる。地面を見たり、遠くの広大な景色に眼をやったり、視線を動かしながら歩いていく。まるでこの世界の中にいる自分自身の存在を確かめているかのようだ。コロナ禍で撮影した別のシリーズを経たことで、この作品に対してもより深く考えられたという。世の中にあるミクロとマクロの世界をこれからどのように写真に落とし込んでいくのかを、期待したい写真家。
タイトル | 小林茂太『cairn』 |
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出版社 | 私家版 |
価格 | 3,800円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/150mm×220mm/192ページ/300部 |
URL |
鈴木理恵/龍崎俊『water reflected on white wall』
写真家・鈴木理恵と龍崎俊のふたりによるこの写真集は、2019年にBOOKS f3で展示を行った際に制作されたもの。パートナーであり写真家でもある両者の写真はスナップショットがメインだ。それに加え、お互いを撮った写真も多い。本書では、左開きのカラー写真が鈴木、右開きのモノクロが龍崎の作品になっている。それら1枚1枚を束ね、ミシン縫いでひとつに綴じている。個々で発表している写真集とはまた違う、互いの存在を意識できる1冊。これからも作品に合った見せ方を、ZINEの気軽さでどのように表現してくれるのか、楽しみにしている。
タイトル | 鈴木理恵/龍崎俊『water reflected on white wall』 |
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出版社 | 私家版 |
価格 | 1,805円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ソフトカバー/297mm×412mm/18ページ |
URL |
BOOKS f3
写真集を中心に新刊・古書を扱う新潟にある本屋兼ギャラリー。本に馴染みのない人でも気軽に訪れて欲しいという店舗には、ギャラリーでの展示に関連する本やおすすめの本が並ぶ。優しい空間でコーヒーを飲んだり話したりしているうちに、自分の視野や感性を広げるとっておきの1冊に出会いがあるかもしれない。
〒950-0075
新潟県新潟市中央区沼垂東2丁目1−17
tel:025-288-5375
http://booksf3.com/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。