毎日の生活に欠かせない、
写真・文=大森克己
「愛と微笑みと花 2021」
1. “Singet dern Herrn ein nettes Lied” BWV225 「主に向って新しき歌をうたえ BWV225」
作曲者:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
指揮:コンラート・ユングヘーネル
演奏:カントゥス・ケルン
2. “FUNKIER THAN A MOSQUITO’S TWEETER”
ニーナ・シモン
3. “Gigue en Sol majeur” K.574「ジーグ(小さなジーグ)ト長調 K.574」
作曲者:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
演奏:アンドレアス・シュタイアー
4. “O Astronauta De Mamore”(Starman)
セウ・ジョルジ
5. “2 Kool 2 be 4-Gotten”
ルシンダ・ウィリアムス
6. “O Pato”「ガチョウのサンバ」
ナタリア・ラフォルカデ
7. “Soave sia il vento”「風が穏やかで」
作曲者:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
指揮:テオドール・クルレンツィス
演奏:ムジカエテルナ
8. “MORRE-SE ASSIM”
カエターノ・ヴェローゾ & ジョルジ・マウチネル
9. “Moro, lasso, al mio duolo”「私は死ぬ、悲しみや苦しみゆえに」
作曲者:カルロ・ジェズアルド
指揮:マルコ・ロンギーニ
歌:デリティエ・ムジケ
10. “The Tears of A Clown”
スモーキー・ロビンソン & ザ・ミラクルズ
写真を撮るとき、見るときに、積極的に音楽を聴くことは多くない。風の音、雑踏、人間の呼吸、衣擦れ、クルマの音、波の音、そんなこんなを感じているのだ。しかし、たまにはスマートフォンとヘッドフォンで音楽を聴きながら街を歩いてみるのも悪くないかもしれない。音楽は身体と魂を浮遊させるのでモノの見え方が少し変わって新しい何かが立ち上がって来ることもあるだろう。今回セレクトした曲は、すべてスマートフォンが普及する以前に作曲されたものばかり。特にモーツァルトは18世紀、バッハは17世紀から18世紀、ジェズアルドにいたっては16世紀から17世紀を生きた人なので写真術の発明される随分前の音楽である。写真が発明される前に人間はどのように世界を見ていたのか?僕たちはそれを忘れてしまっている。古い音楽を聴いているとそんな問いかけが浮かんできて楽しくなる。人類の長い歴史の中で、写真が無かった時間の方がとんでもなく長い訳で、自分のなかに眠っているスマートフォンの無かった時代、写真術の無かった時代の記憶を思い出しながら、音楽を聴いて踊ってみる、というのが今回の選曲のテーマである。メロディーやハーモニーだけでなく、歌に潜む子音やアクセントを聴きながら踊るということ。
「愛と微笑みと花」っていうのは6曲目の “O PATO”のオリジナル・ヴァージョンが入っているジョアン・ジルベルトが1960年に発表したセカンド・アルバムのタイトルです。
大森克己 |Katsumi Omori
1963年、兵庫県神戸市生まれ。1994年『GOOD TRIPS,BAD TRIPS』で第3回写真新世紀優秀賞を受賞。近年の個展に「sounds and things」(MEM/2014)、「when the memory leaves you」(MEM/2015)、「山の音」(テラススクエア/2018)などがある。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒのMuseum Rietberg『GARDENS OF THE WORLD 』(2016)などのグループ展に参加。主な作品集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。YUKI『まばたき』、サニーデイ・サービス『the CITY』などのジャケット写真や『BRUTUS』『SWITCH』などのエディトリアルでも多くの撮影を行っている。最新刊は『心眼 柳家権太楼』(平凡社)。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。