毎月IMAが開催するオンライン写真コンテスト「IMA next」では、毎回異なるテーマを掲げ、写真家やキュレーター、編集者などがゲスト審査員となり優れた作品を選出する。8月9日まで応募受付中のテーマは「SCENE」。60年以上もの間、常に挑戦的な姿勢で写真を撮り続けてきた日本写真の巨匠、川田喜久治氏がキャリア初期に影響を受けたこと、そして常に進化を続けるためのモチベーションなどを尋ねてみた。
―1952年、雑誌『カメラ』で土門拳、木村伊兵衛が審査員を務めていた月例審査で特選を受賞されていらっしゃいますが、写真界を牽引する方々に評価された経験は、高校を卒業したばかりだった川田さんにどのような影響を与えたのか教えていただけないでしょうか?
写真家を目指すことになったのは、お二人による評価が高かったからだと思います。
― キャリア初期の作品に対するフィードバックは、後の制作に影響を与えましたか。
初期作品は「地図 The MAP」ですが、ジャンルの違う人たちの関心が多かったこともあり、写真もまた広く深く遠くへと向かわなければと思いました。
―今回の審査では、テーマを「SCENE」とさせていただきました。幅広い写真表現の応募があると予想されますが、川田さんはどのような作品を期待していますか?
「SCENE」 というテーマは編集部が考えたタイトルですが、「これでは写真が撮れない」という人も自由にやってみて下さい。ことばにとらわれず、はっとする驚きに出会ったら、それはシーンの一部です。色彩にも時代が映り込んでいること、そこに不確かな光景が見えるようなものを期待しています。
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©Kikuji Kawada, courtesy of PGI
―1965年に刊行された『地図』は、日本写真史における金字塔のひとつです。写真集は新装版や復刻版が刊行され、当時は銀塩プリントでしたが、その後にインクジェットプリントやプラチナムプリントにも取り組まれました。また、2021年にPGIで開催された「エンドレス マップ」では和紙にプリントされ、飽くなき探究心に感銘を受けるばかりです。60年以上にわたる写真家としてのキャリアを通して、常に変化を恐れず、独自の表現を追い求め続けられる原動力とは何でしょうか?
写真もまたいろいろな技法と解釈と想像を重ね今日に至ります。どんな技法を使っても自由です。光を注視し事象を採集しながら、人間と世界への関心を深めたいと思います。
―2018年からインスタグラムを使い始め、2022年には投稿した写真から選ばれた252点を収録した『Vortex』という写真集を刊行されています。インスタグラムに興味を持ったきっかけを教えてください。インスタグラムに投稿する写真と、その他の写真との違いはありますか?もしくは、インスタグラムを使用したことで、写真制作において新しい発見はありましたか?
アップする写真は印刷物、プリントで残すものと同じ作品で基本的に変わりません。
色彩に対する変化、視線の軸の変更、ことばとの新たな関係、イメージの破壊や連鎖など、頻繁にアップすることで解釈も変わりつつあると思います。
©Kikuji Kawada, courtesy of PGI
ー 若手写真家に対してのアドバイスがあれば、お願いいたします。
自分にとって好きなもの、不確かなものへ、関心をもち続けてほしいと思います。
ー今後の活動を教えてください。
ロンドンのサイエンスミュージアムで近々個展が企画されています。
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応募期間 | 2023年6月9日(金)〜8月9日(水) |
応募料金 | 2,000円/1エントリー |
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