11 June 2026

アバロス村野敦子、祖父村野藤吾の建築を「喪失」を巡る写真集刊行

11 June 2026

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アバロス村野敦子による写真集『Side Stories: 建築と喪失』(2860円)が、FORGET BOOKSより6月20日に刊行される。本書は現在、八ヶ岳美術館で開催中の同名展覧会を再構成したもので、未展示作品を含む約84点の写真とテキストによって構成される。

アバロス村野敦子は、近代日本を代表する建築家の一人である村野藤吾の孫にあたる。これまで修道院や漂着物、フォッサマグナなどをテーマにした作品を発表してきたが、本書では長年撮影を続けてきた祖父の建築を主題に据える。

本書の出発点となったのは、阪神・淡路大震災によって失われた村野藤吾の自邸への追憶である。そこから「建築の看取り」「祈り」「新しい家」といった七つの物語が派生し、建築を単なる設計作品としてではなく、人々の記憶や時間を宿す存在として捉え直していく。

写真集に収録されるのは、すでに解体・消失した建築を含む村野建築の姿だ。世界平和記念聖堂、旧西宮トラピスチヌ修道院、奈良ドリームランド、旧箱根プリンスホテル、日生劇場など、戦後日本の建築史を彩った建築群が登場する。そこには保存される建築だけでなく、転用され、侵食され、あるいは失われた建築も含まれている。

建築写真というジャンルはしばしば完成された造形の記録として扱われる。しかし本書でアバロスが向ける視線は、建築そのものよりも、建築と人との関係にある。誰かの日常を受け止め続けた空間、役割を終えながらも痕跡を残す建築、そして失われた後も記憶のなかで生き続ける場所。写真は建築を記録する手段であると同時に、喪失を受け止めるための装置として機能している。

展示構成を担当した建築家・榮家志保によるテキスト「展示構成について」、FORGET BOOKS代表で編集・デザインを手がけた佐伯達也による「建築はことばなく立つ」も収録される。写真、建築、編集という異なる視点が交差することで、本書は単なる作品集を超えた建築論としての側面も備えている。

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