東京・赤坂のゲーテ・インスティトゥート東京にて6月13日から「Reset. Düsseldorf Photography after Thomas Ruff」展が開催される。本展は、ベルント&ヒラ・ベッヒャーからトーマス・ルフへと受け継がれたデュッセルドルフ写真の系譜を出発点に、その後の写真表現がどのような展開を見せたのかを検証する。
デュッセルドルフ美術アカデミーは、20世紀後半以降の現代写真を語るうえで欠かせない教育機関として知られる。ベッヒャー夫妻のもとからは、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、カンディダ・ヘーファー、そしてトーマス・ルフといった世界的な写真家が輩出された。類型学的な視点とコンセプチュアルな方法論を特徴とする「デュッセルドルフ派」は、写真を芸術として位置づけるうえで大きな役割を果たした。
しかし2000年代に入り、ルフが教授として写真クラスを引き継いだ時代は、写真を取り巻く環境そのものが大きく変化した時期でもあった。デジタル技術の普及、インターネットによる画像流通の加速、そして無数のイメージが日常的に消費される状況のなかで、写真はもはや単純な記録メディアではなくなった。ルフ自身もまた、天体写真やインターネット画像、3DCGなどを積極的に取り込みながら、「写真とは何か」という問いを更新し続けてきた。
本展では、そのルフのもとで学んだ日本とドイツの作家たちの作品を紹介する。出品作家には、大島成己、鈴木崇、土屋紳一、高東滋といった日本人作家に加え、カトリン・ヘーヴェル、トーマス・ノイマン、アンネ・ペールマン、マルティナ・ザウター、ユルゲン・シュタークらが名を連ねる。
参加作家たちの表現は実に多様だ。写真をレイヤーやコラージュによって再構成する試み、写真と彫刻やインスタレーションを横断する実践、言語や記憶、考古学的な痕跡への関心、さらには知覚そのものへの問いかけなど、それぞれが写真というメディアの枠組みを押し広げている。
なかでも興味深いのは、彼らが共有するのが特定のスタイルではなく、「写真とは何か」を問い続ける態度であることだろう。ベッヒャー派が築いた客観性や類型学的視点を継承しながらも、その先にあるデジタル時代のイメージ環境へと向き合うことで、写真は記録から認識論へ、対象の表象からメディアそのものの探究へと重心を移している。
展覧会タイトルの「Reset」は、単なる世代交代を意味しない。写真というメディアが大きな転換点を迎えた時代において、デュッセルドルフ写真がどのように再起動されたのかを示す言葉である。本展は、現代写真の重要な潮流を理解するための貴重な機会となるだろう。
| タイトル | Reset. Düsseldorf Photography after Thomas Ruff |
|---|---|
| 場所 | ゲーテ・インスティトゥート東京 2Fギャラリー(東京都港区赤坂7-5-56) |
| 会期 | 6月13日(土)〜7月19日(日) |
| 時間 | 13:00〜20:00 |
| 休み | 月曜日 |
| 料金 | 無料 |
| URL | https://www.goethe.de/ins/jp/ja/ver.cfm?event_id=27291273 |
