今年のギャラリー出展作品の傾向は?
大小さまざまなブースがひしめき合うギャラリーブースでは、全般的な印象としては、売れ筋なのか、ヴィンテージ作品とファッション系が目につくのが今年の傾向のようだが、日本のギャラリーや日本人作家の作品も健闘している。エントランスの正面には、銀紙に壁面が覆われたタカ・イシイギャラリーの独創的なブースがまず目に入る。所属作家のほか、70年代から活動する築地仁によるヴィンテージプリントも展示。MEMは、丹平写真倶楽部(1930年に結成された写真家集団)から、河野徹、音納捨三、椎原治3名のヴィンテージプリントでスペースを埋め尽くしていた。古いものでは1930年に撮影、プリントされた作品や、一点もののフォトグラムなど貴重なプリントも間近で見ることができる。ほかに日本からはユミコチバアソシエイツが、また新進ギャラリーのスペースでEmon Photo Galleryが参加している。Christophe Guye(チューリッヒ)では、鈴木理策と志賀理江子の大判プリントが飾られ、目を引いていた。また、POLKA(パリ)では、滝沢広のユニークプリントも出品され、日本人作家は海外ギャラリーでも人気を博している模様。
全体的にはヴィンテージのボリュームが増えた印象はあるものの、単なる巨匠作家のヴィンテージプリント以外に、“発掘系”作家の作品も見受けられた。『IMA』でお馴染みのコンテンポラリー作品では、ピーター・ヒューゴが南アフリカやルワンダの子どもたちを撮った新作のポートレイトがSTEVENSON(ケープタウン/ヨハネスブルグ)に飾られていたり、Roman Road(ロンドン)ではトーマス・マイランダーのサイアノタイプのシリーズと日焼けを用いたシリーズの大型インスタレーションを行なっていたり、NORDENHAKE(ベルリン、ストックホルム)ではマイケル・シュミットの単独展示をしていたり、Grundemark Nilsson Gallery(ベルリン)では『IMA』Vol.17の表紙を飾ったインカ&ニコラスの最新作を飾っていたり。日本ではなかなか見る機会の少ない、旬の海外現代写真作品を実際に目にすることができるのも魅力だし、いわゆる写真の流行が図れる。
ほかにも出版社シュタイデルのポップアップ展示のほか、「プロヴォーク」から映画まで、幅広いテーマを掘り下げるトークイベントも多数用意し、コマーシャルとアカデミズムのバランスをとった新しいパリフォトがだんだんと個性を確立し始めている印象だ。
IMA Photobooksでは、小宮山書店ブースで写真集『TOKYO』の西野壮平によるサイン会を開催。The Paris Photo-Aperture Photo Book AwardのFirst Book Awardにノミネートされていたこともあり、感度の高い写真ファンと交流できる機会となった。ちなみに今年のアワードのグランプリ受賞作は、First PhotoBook Awardがマイケル・クリストファー・ブラウンの『Libyan Sugar』(Twin Palms Publisher刊)、PhotoBook of the Yearが『ZZYZX』(MACK刊)。『ZZYZX』は『IMA』も注目していた作品で、次号のストリートスナップ特集の巻頭で紹介している。
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