香港のDavid Zwirnerでは、第一線で写真表現を拡張し続けているフィリップ=ロルカ・ディコルシアのアジア初となる大規模な個展を開催中。ディコルシアの30年以上にわたるキャリアを巡る展覧会となっている。
友人や家族の何気ないスナップショットに見立てつつ、実は巧妙にセットアップされた1980年代のポートレイト写真群や、ロサンゼルスの男娼たちを撮影し、彼らの名前、年齢、出身地、性的サービス料をキャプションとして添えた代表作「Hustler」などの初作品では、フィクションとリアリティを独自の塩梅で組み合わせている。また、さまざまな都市の路上で強いストロボを当てた瞬間を撮影し、日常をドラマティックにとらえた「Streetwalk」では、“決定的瞬間”的な表現に試み、2000年代の代表作「Heads」は、ニューヨークのタイムズスクエアを行き来する人々に頭上から光を当て望遠カメラで撮影し、撮られたことに気づいていない被写体の無防備な表情をとらえ、ポートレイト写真の新境地を切り開いた。
こういった一連の代表作だけでなく、本展で展示される1997〜2008年に雑誌『W』でディコルシアが手がけたファッション写真も見逃せない。ファッション写真の伝統的な美意識や調和から巧妙に外れ、イマジネーションと皮肉、そしてグラマラスと粗さの間のバランスを探求している。
展覧会の最後に登場するのは、「East of Eden(エデンの東)」。ジョージ・W・ブッシュ時代政権が終焉に向かうアメリカの冷え切った経済と政治をスタート地点としたシリーズである。金融危機と聖書の創世記をパラレルに扱いながら、何も知らなかったピュアな時代には戻れないことを描写している。
Philip-Lorca diCorcia The Hamptons, 2008 Inkjet print Framed: 105.7 x 156.5 x 4.5 cm © Philip-Lorca diCorcia Courtesy the artist and David Zwirner
また、そのほかにも、ディコルシアが撮ったポラロイドも紹介。特定のシリーズと関連しているものもあれば、プライベートかで撮られたものもあり、彼の感性やまなざしを垣間見ることができる。ディコルシア作品における視覚的、そして概念的な魅力を紐解く貴重な機会をお見逃しなく!
タイトル | 「Philip-Lorca diCorcia」 |
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会期 | 2019年9月10日(火)~10月12日(土) |
会場 | |
URL | https://www.davidzwirner.com/exhibitions/philip-lorca-dicorcia |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。