18 January 2021

子どものための写真学校
Lesson 3 Part1

写真がもっと楽しくなる、写真絵本の世界
(IMA 2014 Autumn Vol.9より転載)

18 January 2021

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子どものための写真学校 Lesson 3「写真がもっと楽しくなる、写真絵本の世界」Part1 | 子どものための写真学校 Lesson 3 Part1

アート写真ってなんだかちょっと難しいでしょ? 『IMA』vol.9では、そんな子どもたちのために写真の学校をオープンしました。実はアート写真には、日常が豊かになるような身近なヒントがたくさん隠れています。大人も一緒に学べる特別授業となりました。ここでは、「子どものための写真学校」より一部のコンテンツをご紹介します。Lesson 3では、写真研究家の小林美香先生がピックアップした写真絵本を2回に分けてお届けします。世代を超えて愛されている名作もあれば、気鋭のフォトグラファーによるユニークな写真絵本も! 物語を伝えるために写真がどのように使われているかチェックしてみよう。

小林美香=文

Lesson 3
写真がもっと楽しくなる、写真絵本の世界 Part 1

これまでにあまり馴染みのなかった写真絵本。でもその扉を開けば、さまざまな写真や物語に出会える。新旧の写真絵本の読み解き方を、写真研究家の小林美香先生が教えてくれたよ。

写真絵本の楽しみ方
ひとくちに「 写真絵本 」といっても、そのスタイルや表現方法はさまざま。子どもが主人公として登場する絵本では、子どもの動作や表情、視線が巧みにとらえられ、主人公の子どもに感情移入して読めるように写真と文章が組み合わせられています。また、生き物をクローズアップして撮影した写真で構成された絵本は、生き物が間近に迫ってくるようなインパクトを備えているだけでなく、動物の生態や周囲の自然環境などさまざまなことを教えてくれます。 

今時の子どもたちは、小さい頃からデジタルカメラで写真を撮ることに馴染んでいますから、写真絵本のテーマの中には写真を周囲のものを観察するための道具として使ったり、写真を使って工作をしたりする、といったことも取り込まれています。そういった写真絵本を繰り返して読むことで、写真の中に写っているさまざまなものを発見したり、読み終わったあとに、身の周りにあるものへの見方が少し変わったりすることもあるのではないでしょうか。

ぼく・わたしの物語

絵本の中で描かれる子どもたちとその物語。写真だからこそのリアリティ、そしてファンタジー。

■『The Red Balloon』Albert Lamorisse (Doubleday/1956)

アルベール・ラモリス監督の短編映画『 赤い風船 』(1956年)をもとに制作された写真絵本。パリで暮らす少年パスカル(監督の息子)は赤い風船と巡り合い、最後にはたくさんの風船が集まってきて青空の向こうへと飛び立っていくことに。白黒写真のページに時折カラー写真のページが差し挟まれ、鮮やかな風船の色が目を引きます。当時のパリの町並みの情景も味わい深い。

■『よるのびょういん』谷川俊太郎=作 長野重一=写真 (福音館書店/1979)

ゆたか君という男の子が夜中に緊急入院し、盲腸の手術を受けて朝を迎えるまでの過程を追ったドキュメント。流し撮りでとらえられた病院に向かう救急車の表紙に始まり、病院搬送時の緊迫した様子、不安そうな両親の表情、手術の臨場感などが、街の夜景や病院の中の情景を交えてドラマチックに表現されています。

■『イエペはぼうしがだいすき』石亀泰郎 (文化出版局/1978)

デンマーク人の男の子、イエペが家や保育園での生活を語るフォトストーリー。片時も帽子を手放さないイエペを間近にとらえ、表情の変化やちょっとした仕草、友達とのやりとりを、写真のシークエンスや見開きの組み写真で生き生きと描きだしています。70 年代デンマークの保育園の中の様子が伺えるのも興味深いところ。


初めての1、2、3

子どもたちが初めて目にする文字のない絵本には、 シンプルだからこそユーモアが光る。

■『1, 2, 3, 4, 5』Robert Doisneau (Clairefontaine Lausanne/1955)

ロベール・ドアノーが写真を始めた頃に作った、いまでは希少本となる写真絵本。右のウェグマンと同様に、ページをめくるごとに写っているモノや人たちの数が増えていくという一冊。楽しさいっぱいで、1枚の写真にそれぞれのストーリーが宿る名作。

■『1 2 3』William Wegman (Hyperion; Brdbk/1995)

愛犬を登場させる作品で知られるウィリアム・ウェグマンがユニークな方法で数の数え方を教えてくれます。「 犬文字 」として形作られた数字と、数が増えるごとに増えていく犬たちの姿(脚だけが写っている場面もあります)や情景はなんともユーモラス。これだけの数の犬が、見事に身動きせずに写真に写っていることにも驚かされます。


工作してみたよ

写真を切ったり、組み合わせたり……写真はどんなふうに使われているのかな?

■『かん かん かん』のむらさやか=文 川本幸=制作 塩田正幸=写真( 福音館書店『0.1.2えほん』/2010)

踏切の遮断機の「 かんかんかん 」という音とともに、黒い背景に色鮮やかな食べ物や車、ねこ、動物などいろんなものをのせた列車が次々と現れていきます。シンプルでリズム感のよい言葉の繰り返しが楽しく、何度か読むうちに、写真に写っているいろいろなモノや素材を発見することができる1冊。

■『光景』池田朗子 (青幻舎/2008)

スナップ写真や雑誌に載っている写真の一部分を切り抜いて、表面から起こし、それをいろいろな場所に置いて写真に撮ってみる。すると、写真にとらえられた場面が、周囲の空間と入り混じり、異なる時間とともに、二次元と三次元が交錯する別次元の「 光景 」が立ち現れてきます。ページをめくっていくと、自分の身体が大きくなったり、小さくなったりするような不思議な感覚が味わえます。

小林美香|Mika Kobayashi
写真研究者。国内外の各種学校・機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画するほか、雑誌への寄稿も多い。著書『写真を〈読む〉視点』、訳書に『ReGeneration』 『MAGNUM MAGNUM』『写真のエッセンス』などがある。2010年から東京国立近代美術館客員研究員。

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