25 November 2021

ミヤギフトシ
「写真を通した現代美術家のまなざし」

25 November 2021

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20 Photobooks Around Gender ミヤギフトシ「写真を通した現代美術家のまなざし」【IMA Vol.36特集】 | 20 Photobooks Around Gender ミヤギフトシ「写真を通した現代美術家のまなざし」【IMA Vol.36特集】

IMA Vol.36「流動するジェンダーの時代」の関連記事第4弾は、ユニークな視点をもつ4人の選者が、ジェンダーにまつわるテーマで5冊ずつ写真集をセレクトした企画「20 Photobooks Around Gender」より、ミヤギフトシのセレクトを取り上げる。写真、映像、彫刻、ペインティングなどさまざまな活動を行うアーティストたちがカメラに収めた、スナップ写真やポートレイトといった表現に触れながら、ジェンダーのあり方を探ってみよう。

セレクト=ミヤギフトシ

写真表現だけにとどまらない作品制作を行う・行ってきた美術作家による、被写体、あるいは社会との関係性が見え隠れする作品集を主に選んだ。それらの写真に記録されたのは、近しい家族、常に「観られる」立場にいる女優、あるいは男性性の象徴である存在など。作品としての写真の場合も、作品とは距離のあるスナップショットの場合もある。それらの写真は、メディア表象におけるMale Gaze=男性視線や国境、セクシュアリティを定義する境界を揺さぶる。私たちが何かに投げかける視線が、「男性的」「女性的」などという思い込み、社会のジェンダー規範に囚われていないか、時に雄弁に、時にささやかに、それぞれの手法で訴えかけてくる。

1.『A Selection of Snapshots』フェリックス・ゴンザレス=トレス(A.R.T. Press、2010)

A Selection of  Snapshots

空に浮かぶ雲など、作品によく現れるイメージも多数収録されているが、最も多いのは、彼が収集しているらしいディズニーやピーナッツの人形が2体並んでベッドで眠るイメージだ。それらは必ず同性のペアで身を寄せており、ジェンダー規範を模倣するような動物の人形を用いつつ、規範へのしたたかな抵抗が見え隠れする。


2.『Ascent』フィオナ・タン(IZU PHOTO MUSEUM、2016)

Ascent

富士山を映した写真のスライドショーと、男女の対話で構成された作品映像の記録。古くから御神体としてあがめられ、日本の象徴とされた富士山。男たちに描かれ、時にプロパガンダに用いられてきたその山を、女性の視点からとらえ直す試み。用いられた写真の多くは一般人によるスナップで、時に崇高さとは無縁の日常が垣間見える。


3.『Roni Horn aka Roni Horn』ロニ・ホーン(Steidl、2009)

Roni Horn aka Roni Horn

「役を演じる自分」を演じるイザベル・ユペールの表情を撮った「Portrait of an Image」、思春期を迎える姪のおどけた表情を撮った「This is Me, This is You」など、同じ被写体を撮影した複数の写真を並べ、彼女たちの視線が何に対峙しているのか疑問を投げかけ、被写体と閲覧者の見る・見られる関係を揺さぶる。


4.『Portrait of an Artist』エリザベス・ペイトン(Damiani、2009)

Portrait of an Artist

男性性を削ぎ落としたかのような男性のポートレイトが印象的なペインター、エリザベス・ペイトンによる、アーティストやミュージシャンのポートレイト写真集。写真はデジタルも含み、意外なほどに「普通」なスナップも多いが、ブレていたりピンボケした華奢な男性たちの写真に、彼女の絵画作品を思わせる親密さと揺らぎが見え隠れする。


5.『Flower Smuggler』ダイアナ・タマン(Art Paper Editions、2020)

Flower Smuggler

国境の先にある家族の墓に供えるための花を持って行った祖母が、花の密輸入者として国境で摘発されたことを知ったタマンは、祖母と一緒に造花を持って改めて墓参りに出かける様子を記録した。そのほかにも表題作をはじめ、曽祖母、祖母、母親、そして作家自身という、女系の世代間、あるいは世代を超えた関係性を探る作品を収録する。

ミヤギフトシ| Futoshi Miyagi
1981年、沖縄生まれ。主な個展に「How Many Nights」(2017 年、ギャラリー小柳)、グループ展に「作家と現在」(2020年、沖縄県立博物館・美術館)、あいちトリエンナーレ(2016年)などがある。2019年に小説『ディスタント』(河出書房新社)を出版。

  • IMA 2021 Autumn/Winter Vol.36

    IMA 2021 Autumn/Winter Vol.36

    特集:流動するジェンダーの時代

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