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書店員がピックアップする4月のおすすめ写真集【Shelf編】

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東京都

26 April 2018

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書店員がピックアップする4月のおすすめ写真集【Shelf編】 | ダイアン・アーバス『A Box of Ten Photographs』

ダイアン・アーバス『A Box of Ten Photographs』

東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。

セレクト・文=森屋恵美(Shelfオーナー)


春になって各都市でいろいろな写真展が始まっています。本書はこの4月からワシントンD.C.のスミソニアン・アメリカ美術館で開催されているダイアン・アーバスの同名展覧会に合わせて出版された本です。ダイアン・アーバスはゲーリー・ウィノグランドやリー・フリードランダ―とともに1960年代以降のドキュメンタリー写真の方向性を示した写真家であるのみならず、そのドラマティックな生涯により、また何よりも見る者を惹きつけ強い印象を残す作品により、多くの人が知る写真家です。

『A Box of Ten Photographs』はアーバスが自殺によりその短い生涯を終える1~2年前に制作したポートフォリオです。マーヴィン・イズラエルのデザインによる美しいガラスケースに10点のプリントを収め、当初1セット1000ドルで50部限定で販売予定であったとされています。しかしアーバスの生前に売れたのはわずか4セットでした。リチャード・アヴェドンが自分用と贈り物用に2セット、画家のジャスパー・ジョーンズが1セット、そしてハーパース・バザーのアートディレクター、ベア・フェトラーが1セット購入したのですが、アーバスはフェトラーに4セット目を販売する際にもう1点プリントを加えました。本書の前半は、このベア・フェトラーへの1セットが復刻されたような形で綴じ込まれています。まるで印画紙そのもののような質感の写真ページ、一点一点の写真につけた手書きのキャプション入のトレーシングペーパー、半透明のスリップケース…手書きで書かれた表紙の題字は「ten」を斜線で消して「eleven」に訂正されています。後半は展覧会のキュレーターであるジョンP.ジェイコブがダイアン・アーバスのキャリアを見渡したエッセイや、1971年のArtform誌で掲載された記念碑的な特集誌面などが収録され、全体として展覧会カタログの役割を果たしつつも、蒐集したくなるような魅力的な作りとなっています。

タイトル

ダイアン・アーバス『A Box of Ten Photographs』

出版社

Aperture

価格

11,630円+tax

発行年

2018年

仕様

ハードカバー/350mm×290mm/96ページ/English

URL

http://shelf.shop-pro.jp/?pid=130129451


こちらも現在スペインで展覧会開催中のジョエル・マイエロヴィッツの作品です。1970年代後半以降ニューカラー写真家の代表格の一人として認知され、近年はモランディやセザンヌのアトリエを撮ったシリーズで人気が再燃しているマイエロヴィッツですが、この展覧会そして本書で紹介されている写真のほとんどは1966年から1967年の間にスペインのマラガで撮影されたものです。もともと出版社で働いていたジョエル・マイエロヴィッツはロバート・フランクの写真セッションに参加したことをきっかけに、1962年、写真家になるために編集の仕事をやめます。小さなカメラとロバート・フランクの写真集『アメリカ人』をプレゼントしてくれた元上司の応援もあり、ニューヨークでトニー・レイ・ジョーンズ、ゲーリー・ウィノグラン、トッド・パパジョージとともにはじめは35mmカメラで写真を撮り始めました。

写真家としてのスタートから4年が経ち、地元で有名なフラメンコ一家のもと半年間をスペインで過ごす中で撮影した写真は、当時の独裁政権下の社会状況を捉えたドキュメンタリータッチのものからストリートフォト、ロードトリップ写真、フラメンコ一家のポートレートまで多彩なテーマの中にも、ちょっとしたユーモアを隠した豊かな表現力が感じ取れます。展覧会はバレンシアのBombas Gens Centre d’Artにて、来年の1月まで開催されています。

タイトル

ジョエル・マイエロヴィッツ『Out of the Darkness』

出版社

La Fabrica

価格

6,590円+tax

発行年

2018年

仕様

ハードカバー/320mm×250mm/180ページ/Eng, Fre, Spa

URL

http://shelf.shop-pro.jp/?pid=130407750


デビュー作『生きている』から20年めを迎えた佐内正史の新刊写真集です。2008年にスタートした自身の自費出版レーベル「対照」からは6年ぶりの写真集となります。「対照」レーベルといえば巨大サイズ、重量たっぷり、光をはね返す白い表紙…の印象ですが、今回の新刊はレーベル伝統の平仮名が入らない見た目かっちりしたタイトルを踏襲しつつも、いままでとは異なる質感の本です。写真家本人曰く、「ページを開いて見るほどに味わいが出てくる写真集を作りたかったので、傷みやすい紙をリクエストした」。中には表紙をめくった見返しから後ろの見返しまで、プリント原寸サイズの写真が断ち切りでぎっしりと詰まっています。あとがきとか、本扉とか、ノンブルとか、奥付とか、そういうものは一切なく写真だけ。表紙を含めて130点のどれもこれもが紛れもない佐内正史です。厚みのある本のなかに見開きで一枚のイメージが入っているので、そっと頁をめくっていたのではよく見えません。見開きの頁がフラットになるまで思い切ってググッと開くのが正しい見方。繰り返しそうやって見ているうちに紙の質感がだんだん柔らかくなり、背には無数の折れ筋が入ったとき、佐内正史の6年間がたっぷりつまった本書はあなたのものになるのです。

タイトル

佐内正史『銀河』

出版社

マッチアンドカンパニー、対照

価格

3,240円+tax

発行年

2018年

仕様

ソフトカバー/230mm×140mm/256ページ

URL

http://shelf.shop-pro.jp/?pid=129583807

Shelf
外苑前にあるブックショップ。写真集を中心とした洋書を専門に取り扱っており、店内には希少な本から絶版書までさまざまなジャンルの写真集が所狭しと並べられている。

〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-7-4
tel / fax: 03-3405-7889
http://www.shelf.ne.jp/