「The Paris Photo – Aperture Foundation Photobook Award」はアパチャー財団とパリ・フォトにより年に一度開催されている写真集賞。その豪華な審査員のラインアップと規模の大きさから、毎年世界中の注目を集めている。
同賞は、すべての写真集が応募対象となる「PhotoBook of the Year」部門、処女作のみがエントリー対象となる「First PhotoBook」部門、そして展覧会カタログや美術館の出版物のための「Photography Catalogue of the Year」部門の3部門で構成されている。
今年「PhotoBook of the Year」部門を受賞したのは、ライア・アブリルの『On Abortion』。アブリルは、さまざまな理由により望まない妊娠をした多くの女性が違法の手段で中絶を試みた結果、命を落としているという実態に注目した。現在多くの国や宗教により中絶手術が違法とされている中、倫理的・道徳的問題をディスカッションに織り込みながら、女性の自己決定権の欠如が生む危険性を概念化した作品だ。「On Abortion」は、テキスト、資料、写真、デザインの効果的な構成においても高く評価された。
また今年は、受賞には至らなかったものの、深瀬昌久の『MASAHISA FUKASE』と横田大輔の『INVERSION』も候補作品にノミネートされた。『MASAHISA FUKASE』は現在Foamで行われている深瀬昌久の回顧展Private Scene展に伴い出版された写真集で、「鴉」や「家族」、「父の記憶」や「BUKUBUKU」など作家が生涯にわたって制作した計26シリーズがまとめられている。
また「INVERSION」で横田大輔はOHPフィルムへのシルクスクリーン印刷を試みており、本作は横田の数多いシリーズ中でも最も実験的な作品集といえるだろう。
「First PhotoBook」部門では、Stanley Wolukau-Wanambwaの『One Wall a Web』が受賞。また同部門にノミネートされていた中国人写真作家、ピクシー・リャオの「Experimental Relationship Vol.1」は審査員特別賞を受賞した。
「Photography Catalogue of the Year」部門ではUrsula Schulz-Dornburg の『The Land in Between』が受賞。受賞には至らなかったが、志賀理江子の『Blind Date』も今年の候補作品に選出された。
受賞作品とショートリストにノミネートされたすべての作品は今後ニューヨークのアパチャー財団と、ヨーロッパ中で行われる巡回展で展示される予定だ。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。