25 October 2018

Interview
Go Itami

LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS展 作家インタヴュー vol.2
いまいる場所でしっかりと活動すること、それが世界に繋がっているという実感

25 October 2018

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伊丹豪インタヴュー「いまいる場所でしっかりと活動すること、それが世界に繋がっているという実感」 | 伊丹豪インタヴュー 01

1976年徳島県出身の写真家・伊丹豪は、東京で暮らす日常の風景をフラットでアブストラクトな表情で切り取った写真で知られ、これまでに出版した3冊の写真集はどれも海外の写真ファンの間で話題をさらってきた。2017年に出版した『Photocopy』では物語性を排除するため1冊ごとに掲載順がシャッフルされ全冊が異なるページネーションの本として仕上げられるような仕様にするなど、写真の持つ有限性・無限性やゆらぎなどにも問いかける作品を制作している。伊丹は2013年に第一回目の「LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS」に参加している。コマーシャル撮影やコミッションワークも手がける一方で一貫して作家性の強い作品を発表し続ける伊丹。そのような活動スタイルに至ったこれまでについて聞いた。

インタヴュー・構成=深井佐和子
写真=高橋マナミ

―まず、これまでの活動を振り返り、どこかご自身にとって海外の観客の方々を特に意識するようになったターニングポイントやきっかけはありましたか?

活動当初から現在に至るまで、特別に「海外だから」と意識した経験はあまりないのですが、強いていえば2013年に日本のRondadeから出版した『Study』という写真集がまず海外で良い反応をもらい、その後逆輸入的に日本でも知名度が上がっていったということは自分の意識にあるかもしれません。海外での活動を中心に考えるというよりも、自分は日本を拠点に活動しているので、しっかりと日本で制作活動を続けていくことが、海外に向けても一番アピールできることだろうなとは思っています。

『study』伊丹豪(Rondade/2014)

『study』伊丹豪(Rondade/2014)

『study』伊丹豪(Rondade/2014)

『study』伊丹豪(Rondade/2014)


―日本から海外へ活躍の場を拡大していく過程で、自分にとって苦労したことなどはありましたか?

語学力の問題、端的にいうと英語ですね。現在でも翻訳ソフトを使用しながら相手とコミュニケーションを取っていますが、細かなニュアンスを伝えることが本当に難しく、それが自分にとって一番のハードルです。それから美術の知識、教養が圧倒的に不足しているのは常日頃から自覚しているのですが、特に海外を訪れた際にはそれをより強く痛感します。自分でこつこつ勉強しています。

「Tsuka: An Exhibition of Contemporary Japanese Photography」(TSUKA、オーストラリア/2018)

「Tsuka: An Exhibition of Contemporary Japanese Photography」(TSUKA、オーストラリア/2018)

―ご自身のこれまでを振り返り、海外での展示や活動で特に印象に残っているものはありますか?

RONDADE社から出版した2冊目の写真集 『this year’s model』 は台湾で印刷しました。理由は同時期に台湾で個展「NEW TACK」を開催させてもらってその都合があったからなのですが、展示と印刷両方において現地の方に沢山のサポートをしていただき、密に連絡を取りながら作業を進めました。結果としてこの写真集が自分の活動を大きく飛躍させてくれたこともあって、蒸し暑い台湾の夜がとても印象に残っています。

『this year’s model』伊丹豪(Rondade/2014)

『this year’s model』伊丹豪(Rondade/2014)

個展「NEW TACK」(wooloomooloo、台湾/2014)

個展「NEW TACK」(wooloomooloo、台湾/2014)※画像

個展「NEW TACK」(wooloomooloo、台湾/2014)※画像

―海外での活躍が広がるきっかけのひとつとして、ご自身の写真集がとても大きなツールとしての役割を果たしたようにも思います。自分の作品が特に海外で受け入れられた背景や理由をご自身でどのように分析しますか?

僕の作品が、一神教の文化圏ではあまり見られない、とりとめのないイメージの集合体に見えること、それがオリエンタリズムではなく「東京的」に見えたということ、また、そもそも綴じ方、編集方法、写真の扱い方、など写真集に対する基本的な概念が全く異なるのではないかと思っています。西洋の本作りというのはナラティブがあり始まりと終わりがありますが、僕の本はその外側への広がりを意識している。特に『photocopy』 は写真の順番自体が1冊ごとに異なるというコンセプトでした。そういったことが理由にあったのではないかと自分では分析しています。

『photocopy』伊丹豪(Rondade/2017)

『photocopy』伊丹豪(Rondade/2017)

『photocopy』伊丹豪(Rondade/2017)

『photocopy』伊丹豪(Rondade/2017)

―過去に「Beyond 2020」展に参加してみて、どのような機会になりましたか

それまで写真を志す友人が極端に少なかった自分には、新しい人間関係を築けたことが一番大きかったです。一人で活動していても、なかなか外の世界を知ることは難しいものなので、そういった展示の機会をいただけるのは単純にとてもありがたいことでした。

―国内と海外のオーディエンスは、どのような点で異なりますか?またご自身の写真プリントのコレクターの方々の傾向は国内と海外でどのように違うのでしょうか?

自分が海外で展示を行う際、現地で立ち会うことばかりではないので、僕にはオーディエンスの違いを明確に話せるほどの経験はありません。またコレクターについても同様に何かを語れるほどではないのでなんともいえないのですが、海外の方は展示の際、購入前提で観に来る方が多いです。また、より大きいサイズのプリントを好む傾向にあるかもしれません。

伊丹豪インタヴュー 02

―写真家としての活躍を目指す方々に、オススメのアワードやアートブックフェア等ありましたら教えてください。

現在の世の中では、アワードに頼らずとも個人で活動できると思います。ですが、自分のそれまでの作品をまとめてみたりなど、アワードそのものを区切るきっかけのようにして利用するのが良いのではないでしょうか。また個人的には毎年NY ART BOOK FAIRに行くようにしています。自分の本がどのように受け取られるのか生の反応が見えるし、とにかく世界中のバプリッシャーや、バイヤー、キュレーターなどと話が出来るというのが個人的には一番楽しみです。日本に入ってはこない本を探す楽しみ、新しい本に出会える楽しみもあります。

―これからチャレンジしたいことなどがありましたら教えてください。

とにかく常に新しい写真を撮り続けたいです。

伊丹豪|Go Itami
1976年徳島県生まれ。代表的な写真集に『study』『this year’s model』などがある。東京や台湾、ベルリンなど国内外での展示も勢力的に行い、昨年新作写真集『photocopy』をRONDADEより刊行。
https://www.goitami.jp/

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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