Interview
Sanna Lehto

サナ・レートインタヴュー
フィンランドの自然がもたらすグロテスクでファンタジーな世界

15 October 2019

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サナ・レートインタヴュー「フィンランドの自然がもたらすグロテスクでファンタジーな世界」 | サナ・レート

1990年、フィンランド・ヘルシンキ生まれのサナ・レートはアールト大学美術学デザイン建築学部でファインアート写真を学び、2018年に第33回イエール国際モード&写真フェスティバルにおいて市民賞を受賞するなど、若手注目株として活躍の場を広げている。彼女の作品の中でも注目を浴びたのがシリーズ「Morphologies(形態論)」。花に埋まる男性の顔が印象的なこのシリーズでは、彼女独自のカラートーンを用い、花や植物、人間の体をモチーフにちょっとグロテスクでファンタジーな独特の世界観が展開する。今回、浅間国際写真フェスティバルに際し来日した彼女に、作品とその独自の作風について聞いた。

文=深井佐和子
写真=清水はるみ

―今回、日本で初めての展示とのことですが、いかがですか?

日本には10代の頃に家族で来たことがありますが、フィンランドとあまりにも違って、ちょっとシュールな印象を持ちました。この浅間国際フォトフェスティバルで作品を展示できてとても光栄ですし、「植物園」をテーマにした展示空間の中で、植物を用いた他のアーティストの作品と並べてもらえて嬉しいです。特にカール・ブロスフェルトの植物写真は自分がすごく影響を受けたもののひとつなので、隣で展示できてとっても嬉しいです(笑)。

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―普段は商業写真も手がけるということですが、いわゆる仕事の写真と比較して、花や体を用いた、少し死の影があるような独自の作品は、活動の初期から一貫して制作されていますね。

2012年に「Flower」という作品を制作したんです。テーマは「花」と「葬い」で、生花をたくさん用いて、撮影も大掛かりだったので母や叔母、周りのみんなの力を借りて撮影しました。当時は学生だったし、本当に自分の好きな世界、生み出したいイメージを純粋に制作していました。その後2015年に、森で摘んだ花を押し花にしているときに、それを制作に用いることを思いついたんです。長い冬の間にアイデアを練って、2016年の夏に「Morphologies(形態論)」を制作し始めました。

―日常の一環として森に行かれているのでしょうか?

自然の中を散歩するのはフィンランドではとても重要なリラクゼーションの方法です。自然と人間の距離がとても近いことが、フィンランド全体を通して特徴的だと言えると思います。私にとっても、家族が所有する森の湖のほとりにあるサマーハウスで、サウナを楽しんだり、ブルーベリーや花を摘み、山小屋で過ごすことは生活の一部です。それに重要なインスピレーション源ですね。

―冬の自然が、枯れた花の美しさも教えてくれるのかもしれません。「Morphologies」では、体液や血液を想起させるような液体や、肌のシワなど、完璧さだけではなく朽ちていく美や生々しさも写真に組み込んでいるのが印象的ですね。

生物はあらゆる段階が美しいと思うんです。盛りの時だけではなく、枯れていく美や、その繊細さも大切な側面です。そういう意味では、生と死、両方の側面を内包する生物そのものに魅せられていると思いますし、それが私自身の視覚的な「Morphologies」といえると思います。

また商業写真と違って、「完璧な」モデルを用いないことも重要な点ですね。モデルの多くは私の昔からの友人です。お互いにリラックスして撮影できることが重要なので、そのようにしていますが、いわゆるファッションモデルは持たない美しさが彼らにはあります。その彼らの美しさや人間性を作品に取り込むことが出来るかどうかが、自分にとってパーソナルな作品かどうかの境目でもありますね。

「Morphologies」より

「Morphologies」より

「Morphologies」より

「Morphologies」より

「Morphologies」より


―グレイッシュなピンクや赤の色合いが導く、ちょっとグロテスクで、非現実的なファンタジーが特徴ですね。ユーモアがあったり、何か物語性を感じさせたり……。ひとつひとつはバラバラの写真ですが、全体を通してそのようなシュルレアリスティックなフィクションの世界を感じさせます。その独自の世界はどのように作り上げてきたのでしょうか?

それは単純に、少女の頃からの好みですね! ティーンの頃はビョークに夢中で、神話の世界にも魅せられていました。写真だけではなくドローイングも描いたり、先程いったように自然の中で過ごす中で得られる視点や、発見する美などの個人的な体験も、作品にとってとても重要です。いまは仕事で自分の好みとはまったく違う写真を撮影することもありますが、そこでは表現しづらい、自分だけの想像の世界を何よりも大切にしています。まだ私のキャリアは始まったばかりですが、自分が純粋に好きな世界を見つめ、写真を通して表現し続けていけたらと思っています。

Sanna Lehto

タイトル

「浅間国際フォトフェスティバル 2019 PHOTO MIYOTA」

会期

2019年9月14日(土)~11月10日(日)

会場

御代田写真美術館予定地|MMoP (旧メルシャン軽井沢美術館)周辺エリア(長野県)

時間

10:00~17:00(最終入場は閉場の30分前まで)

入場料

【一般(当日)】1,500円(現地販売のみ)【中学生以下】無料
*一部無料エリアあり/メイン会場となるMMoP内のエキシビジョン棟、ラウンジ棟1F、美術館は当日に限り何回でも再入場可

URL

https://asamaphotofes.jp/

サナ・レート|Sanna Lehto
1990年、フィンランド・ヘルシンキ生まれ。アールト大学美術学デザイン建築学部でファインアート写真を学ぶ。2018年、第33回イエール国際モード&写真フェスティバルにおいてファイナリストに選出され、市民賞を受賞。ポートレイト及びファッション写真を専門とし、ヨーロッパを中心に幅広く活動する。

>サナ・レートのオンラインギャラリー「IMAGRAPHY」はこちら