6 April 2023

IMA next #042 審査員 シャルロット・デュマ、
テーマ「CREATURE」にまつわるQ&A

6 April 2023

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IMA next #042 審査員 シャルロット・デュマ、テーマ「CREATURE」にまつわるQ&A | Ao 青 #14 2019 c-print 50.0 x 40.0 cm e.d. 1/7 ©︎ Charlotte Dumas

Ao 青 #14 2019 c-print 50.0 x 40.0 cm e.d. 1/7 ©︎ Charlotte Dumas

毎月IMAが開催するオンライン写真コンテスト「IMA next」では、毎回異なるテーマを掲げ、写真家やキュレーター、編集者などがゲスト審査員となり優れた作品を選出する。4月24日(月)5月8日まで応募受付中のテーマは「CREATURE」。本インタヴューでは、審査を務める写真家、シャルロット・デュマのテーマに対する思いや自身の制作活動について尋ねてみた。

Q. 「CREATURE」というテーマを選んだ理由とは?

A. 私たち人間とそのほかの生きものを同等に扱うという思いも込めて選んだので、「CREATURE」というテーマをとても気に入っています。すべての生命をどのように語り、どのような言葉で定義するかはとても重要であり、それはほかの生き物の視点も取り入れながら自らを見つめ直す機会を与えてくれます。今回の審査では、多種な作品が見られるのを楽しみにしています。

Q. あなたの作品の多くは、人間と動物の関係性を探求しています。これまでにアーリントン国立墓地で働く軍馬、9・11で活躍したレスキュー・ドッグ、日本の離島に生きる馬などを撮影してきました。写真家として「CREATURE」に惹かれる理由とは?

A. 人間とそのほかの生き物との関係性に対する視点や考え方は、常に変化しています。ですが、本質としては、人間は感覚的な存在、つまりほかの種を視野に入れ、私たち自身の存在に対する異なる視点を持つことが必要だと思います。人間は、種として孤立しています。私たちが自然の一部であることを理解せず、自然を感じる能力を失い、自分たちが自然と同等の存在だと思い込んでしまっているからです。そういう意味では、私は制作を通して、これまでに出会った個々の生き物にパーソナルなつながりを感じながら、ほかの種を含む生き物全体についても意識しています。

Q. 歴史の中で、人間と「CREATURE」の関係性はどのように変化してきたと思いますか?

A. 産業化が進んだことで、それまで動物が担っていたスピリチュアルな役割は急速に失われましたが、その後数百年をかけて、人間が動物たちに付与してきた象徴性やパワーが不可欠であったと改めて気づき、動物たちの存在感は増してきています。人間が動物を宗教的に崇めることで尊敬の念が生まれ、少なからずその動物、そして彼らの生息地に対する扱いに影響を与えています。いまだに私たちは、自身たちが思い描く物語に沿って動物そのものや、動物の描写を「利用する」傾向にあります。そのやり方も間違っていないと思いますが、動物の扱い方は明らかに変わってきていると思います。

Q. 開催中の展覧会「Ao 青」の説明文に、「いかに私たち人間は単独では生きられないか– 動物を見つめることで見える、人間の存在性」という言葉がありました。「CREATURE」との関係性は、私たちの行動にどのような影響を与えるとお考えですか?

A. ここまで述べてきたことにもつながりますが、私たちは動物の扱い方や、お互いとの関わり方からたくさんのものを得ています。他者を思いやる気持ちがあれば、さまざまな生き方や個性を受け入れる余裕を持つことができます。そのゆとりが、平和でインクルーシブな社会で生きていくために不可欠です。最も難しいことのひとつは、他人やそのほかの動物が、自分とは異なる考え方、生き方、行動をとると理解し、その違いを尊重することです。

人間と動物、もしくは異なる生き物同士の言葉を使わないコミュニケーションは、直感的な能力に頼る必要があるとき、物理的なガイダンス(私たちが理性で片付けがちな)を信じなければならないときに大きな力を発揮します。

Q. 作品におけるナラティブの重要性について教えてください。

A. 物語性をより意識し始めたのは、ショートフィルム「SHIO 潮」「Yorishiro 依代」「Ao 青」を制作したときからです。その前までは、被写体と文脈をありのままに写し出す「ステージ」をつくることを重要視していました。最近は、イメージや映像、音を、ストーリーを組み立てる要素として、どのように扱うか考えながら制作しています。現在は、画家であった父の世界に対する視点と人生を辿る映像作品に取り組んでいます。もともと口数が多いわけではなかった父は、晩年、アルツハイマーを患って喋る力を失いました。私が娘や馬と撮影していたときのように、言葉を使わないコミュニケーションにアプローチにしています。

Q. 小山登美夫ギャラリー(六本木・天王洲)で、4月8日まで開催されている「Ao 青」展は、2020年に銀座メゾンエルメスフォーラムでも上映された「SHIO 潮」(2018)と「Yorishiro 依代」三部作の完結編ですね。制作を終えた感想を教えてください。

A. 離島での制作は貴重で美しい経験で、多くを学ぶ機会となりました。3本の映像作品がそのことを証明しており、馬、島、そして3人の少女たちへの賛辞ともいえるでしょう。

Avis 20121 c-print framed in walnut wood without glass 50.0 x 40.0 cm e.d. 1/7 ©︎ Charlotte Dumas

Avis 20121 c-print framed in walnut wood without glass 50.0 x 40.0 cm e.d. 1/7 ©︎ Charlotte Dumas

タイトル

「IMA next」THEME #42 “CREATURE”

応募期間

2023年2月24日(金)〜4月24日(月)5月8日(月)

応募料金

2,000円/1エントリー

URL

https://ima-next.jp/entry/creature/

シャルロット・デュマ|Charlotte Dumas
1977年、オランダ生まれ。2000年にヘリット・リートフェルトアカデミー卒業後、ライクスアカデミーでも写真を学ぶ。オランダ、イタリア、フランス、アメリカなどで多数のグループ展に参加するほか、個展も開催。動物をモチーフにしたポートレイト写真が多く、現代社会における人と動物の関係性について考察している。現在、アムステルダムとニューヨークを拠点に活動。

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