まずは京都ならではの歴史的建造物で行われている3つの展示を紹介。建仁寺塔頭両足院で開催されているのがによる「机上の愛」。これは昨年にパリの 荒木経惟で発表された、6×7のポジフィルムで、「即物的に、気に入ったものをポンと置いて」机の上のみで撮影された「机上の楽園」の日本初公開となる。「楽園」は極楽浄土を表している一方で、死の足音を感じずにはおれない荒木自身の心象風景のようでもある。生と死を行き来するかのような、荒木の死生観を率直に表したスティルライフが、静謐な禅寺に佇む。床の間と茶室に置かれた荒木の書と向き合うとき、ユーモアと皮肉が入り混じる、達観したまなざしをその向こうに見るだろう。両足院という場所だからこそ味わえる写真の風景がそこにあった。 タカ・イシイギャラリー
アーノルド・ニューマン「マスタークラス -ポートレートの巨匠 - presented by BMW
特別展示:BMW アート・カー by アンディ・ウォ-ホル」二条城 二の丸御殿台所・東南隅櫓 Photo by Takuya Oshima
二条城の重要文化財である二の丸御殿台所と東南隅櫓では、(1918〜2006)の展示を見ることができる。ニューマンは、マリリン・モンローやパブロ・ピカソ、ジョン・F・ケネディなど、数多くの著名人を撮影したアメリカのポートレイト写真の巨匠だが、本展は没後初となる国内での回顧展となる。 アーノルド・ニューマン
本展のキュレーターであるウィリアム・イーウィンは、ニューマンの写真についてこう語る。「ポートレイト写真家はほかにも数いるが、70年近くをポートレイトに捧げたのはニューマンのみ。私は彼の写真を、被写体の環境も含めて写していることから、『環境写真(environmental photography)』と呼んでいます。本展では学生時代の写真から、プロの写真家へと成長する彼の変遷がわかるでしょう。同時代のアーヴィング・ペンらと比較すると、同じことを繰り返さず、常にあるものを壊し、新しい表現を行なっているのがニューマンのすごさ。そのために被写体の場所へ訪れて撮影していたのです。生涯で8,000枚ものポートレイトを撮影していますが、中でも好んで撮ったのが画家たち。自身も画家であったことから、被写体の手の表現がいかに重要かを理解していたのです」。雑誌の依頼で撮影をし、生前には写真を販売することはなかったという。即興ながら考え抜かれた構図で撮られた数々の著名人の貴重な写真に、二条城で出会える。
キュレーターのウィリアム・イーウィン
香港で活動するは、昨年のKG+AWARDのグランプリを受賞し、4カ月の京都での滞在制作で、8人の職人たちの元を訪れ撮影を行った。手仕事の伝統を展示にも反映させるため、手透きの和紙にプリントし、和紙を染める職人が染めた紙を干すスタイルから着想を得て展示空間が作られている。「今回の制作を通して、工芸が自然と人間の関係性を写していると気づいたことは大きな発見でした。伝統は世代から世代と受け継ぎ、時間の流れを感じる、それはまた自然の摂理と同様なのです」と語るヤン・カレン。写真作品のほか、神具、鏡の職人とともに作ったカメラ・オブスキュラの装置に写る庭の風景が美しい。無名舎という個人邸の親密な空間で、京職人の静かに熱い魂に触れることができる。 ヤン・カレン
ヤン・カレン「Between the Light and Darkness | 光と闇のはざまに」無名舎 Photo by Takuya Oshima
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現代写真のいまを写す、規格外のインスタレーション
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。