5 December 2021

パリフォトレポート Vol.2「写真集ファン必見の船上のブックフェア Polycopies」

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フランス

5 December 2021

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パリフォトレポート Vol.2「写真集ファン必見の船上のブックフェア Polycopies」 | © Kyoko Kasuya

© Kyoko Kasuya

昨年はコロナ禍の為、惜しまれながらも中止となった世界最大の国際写真フェア、パリフォト。今年は再び世界中から多くのギャラリーが参加し、復活を果たした。日本ではまだフェアなどの開催が模索中の中、どのような形で実現に至ったのだろうか。パリフォトと同期間に開催されたイベントと合わせて、その様子をパリから全3回でレポートする。Vol.2はコアな写真集ファンが集う、船上のブックフェア Polycopiesをチェック。

文=糟谷恭子

>パリフォトレポート Vol.1はこちら

パリフォト同様、今年無事復活を果たしたPolycopies。会場となったAtlantique号(Bateau Concorde Atlantique)には、ヨーロッパを中心に写真集に特化した個性的な出版社が集まり、21時過ぎまで参加者の熱気に包まれていた。今年はOffPrintがパリのエコール・デ・ボザールで開催されず、市内各所に散らばっての開催となった。その為、アクセスのしやすさから来場数の面ではPolycopiesに軍配が上がったようだ。

© Kyoko Kasuya

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Polycopiesのオーガナイザーで、写真集編集者でもあるロラン・シャルドンと、写真集の専門家でコレクターでもあるセバスチャン・ハウは、2年越しの開催について熱くこう語る。「パンデミック前は、編集者も作家も、写真集を制作することに疲れ気味だった。しかしコロナを機に、制作に対して距離を取ることで力を蓄え、リラックスして取り組めているようだ。時間をかけて制作する機会ができて、パワーアップしたように感じたよ。昨年はPolycopiesもオンラインのみでの開催だったので、人と会うことが全くなかった。今回実際に写真集を手にとって鑑賞し、作家や書店のオーナーと会話しながら購入ができ、改めて人と触れ合うことのありがたみを強く感じた。それは参加者も同意見だったと思う。対面でのやりとりは貴重な体験で、オフラインでのPolycopiesの再開は大成功だったと思う」。

もちろん各ブースのイベントも見逃せない。フランス、ブルターニュ地方にある写真に特化し、写真集も手がける現代美術センターCentre d’art GwinZegalのブースでは、ハンナ・ダラビが新刊『Soleil of Persian Square』を発表、サイン会を行っていた。

新刊を持つハンナ・ダラビ。ここでも女性写真家のパワーは衰えない。© Kyoko Kasuya

ハンナ・ダラビ © Kyoko Kasuya


またひとつ上のフロアのドイツの書店Café Lehmitz Photobooksのブースでは、カティア・ストゥーケがセルフパブリッシュとは思えないほどのハイクオリティーな仕上がりの新刊『Super Natural 2021』を発表していた。この新刊は、2000年から続けているオリンピック出場女性選手に特化したポートレイト集。

2021年の東京オリンピックに合わせて刊行したという。

新刊『Super Natural 2021』を持つカティア・ストゥーケ。セルフパブリッシュとは思えないクオリティに仕上がっている。© Kyoko Kasuya

新刊『Super Natural 2021』を持つカティア・ストゥーケ。セルフパブリッシュとは思えないクオリティに仕上がっている。© Kyoko Kasuya

 賑わいを見せるSasori Barの様子。© Yumi Goto / REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD

賑わいを見せるSasori Barの様子。© Yumi Goto / REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD

Polycopiesの会場すぐ近くではLe Bal Booksの責任者、エミリー・ラウリオラが新宿・ゴールデン街を意識したSasori Barを期間限定で開店!写真フェスティバル、Photo Saint Germainのプログラムの一環となる。


Sasori bar © Rebekka Deubner

Sasori bar © Rebekka Deubner

コロナ禍の良い影響を受け、自身の好きなアンダーグラウンドな日本写真に特化したオンラインブックショップSasori Booksを立ち上げたラウリオラ。小宮山書店とタッグを組み、バーの中で伝説の女性写真家・二本木里美の展示をキュレーションした。70年代の新宿、浅草、青山のゲイバーをめぐり、撮り収めたポートレイトで知られる二本木。現在ではQUEERの話題が取り上げられることも多いが、当時はかなり挑戦的な内容だっただろう。

Exhibition 二本木里美 © Arne Adli  バーの中で開催された二本木里美の展示

Exhibition 二本木里美 © Arne Adli バーの中で開催された二本木里美の展示


日本からは、Paris Photo–Aperture Foundation PhotoBook Awardsにも選出された写真集『吉田寮学生寄宿舎史』を制作した野村幹太と、Reminders Photography Strongholdのディレクター、後藤由美がゲストとして参加していた。

ブックフェアだけでなく、多彩なコンテンツで来場者を楽しませたPolycopies。世界各地から関係者が訪れ、コミュニケーションの場としても重要な役割を果たすと共に、小さい規模だからこそアットホームな写真コミュニティが形成されていた。

『吉田寮学生寄宿舎史』を手にする野村幹太(右)。© Yumi Goto / REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD

『吉田寮学生寄宿舎史』を手にする野村幹太(右)。© Yumi Goto / REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD

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