昨年はコロナ禍の為、惜しまれながらも中止となった世界最大の国際写真フェア、パリフォト。今年は再び世界中から多くのギャラリーが参加し、復活を果たした。日本ではまだフェアなどの開催が模索中の中、どのような形で実現に至ったのだろうか。パリフォトと同期間に開催されたイベントと合わせて、その様子をパリから全3回でレポートする。Vol.3はコロナ禍に生まれたプロジェクトPhotoDaysを紹介。
文=糟谷恭子
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数あるパリフォト関連のプロジェクトの中でも、コロナ禍に生まれたプロジェクトを紹介したい。2020年、新型コロナウイルスのパンデミックによりフランスでは美術館、映画館、劇場などの文化施設が閉まり、人々の中でアートが遠い存在になろうとしていた(※)。そんな状況を危惧したパリ市は1回目のロックダウン後、屋外展示に力を入れ、街のいたる所、駅や公園の周りなどで写真展等を数多く企画した。
いくつもの展示やイベントが開催される中で、マン・レイの研究者として知られ、パリ市立美術館の写真部門学芸員を17年間務めた経歴を持つエマニュエル・ドゥ・レコテは、街中でアート写真が楽しめるよう、PhotoDaysを立ち上げた。パリ市内各所で開催されるイベントや展示を連動させるというプロジェクトだ。
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エマニュエル・ドゥ・レコテ © Roger Moukarzel
2回目の開催となる今年は、パリ中で開催される80もの写真や映像の展覧会やイベントを地区ごとにまとめ、パリフォト期間中には効率よく面白い展示が発見できるようPhotoDaysのマップを制作、無料配布した。また、ドゥ・レコテ自らも長年の経験とネットワークを活かし、パリ市内の歴史ある6会場で展覧会を企画。パリ東駅構内では、ノエミ・グダルの、目の錯覚を起こすような、サイトスペイシフィックなインスタレーションを展開した。
また、いまパリで一番のホットなスポットといわれる、フィマンコ財団アートスペースでは映像作家ナターシャ・ニジック率いる女性作家集団ザ・クラウンレターが2020年から2021 年のコロナ渦で制作した作品を発表した。
会場では、展示されているルイーズ・シュローダーのコラージュ作品にインスピレーションを受けたキッズワークショップも行われるなど、賑わいを見せていた。シュローダーはコロナ中にオープンしていた地元ポツダムの図書館で無料で昔の雑誌や本がもらえたことから、毎週そこに通って集めたアーカイブを使用し、ロックダウン中の世界情勢や自分が感じたこと思ったことをコラージュに表現したという。
2年ぶりのパリフォトと関連ベントの復活で、一気に活気を取り戻した11月のパリ。多くの作家はパンデミックのおかげで力を蓄え、精力的に制作発表をすることができた。またギャラリストやキュレーターは2年越しのイベントに例年以上にウエイトを置き、主催者や参加者が一丸となってブースやイベントを盛り上げた。アメリカ、アジア勢が全体的に少なかったもの、予想を超えた数の来場者が世界から集まった。コロナ禍を乗り越えて、来年はどのようなパリフォト月間が展開されるのか、いまから楽しみだ。
*2回目のロックダウン(10月下旬)以降、アートギャラリーだけは開けても良い施設の対象となった。