Charlotte Dumas
注目作家の作品を毎日配信!第110弾はシャルロット・デュマ
「Ao」
与那国島には風景の割れ目のようにも見える深い崖がある。そこにある石板には、18世紀の琉球王国時代、人口増加を食い止めるために妊婦をここから跳ばせていたという歴史が記されている。この淵に立ってみて、飛び込むのは無理だと感じた。この火山島の険しい沿岸で自由に生きる馬たちは、まるで違う時代から現れたようだ。
馬を主人公とし与那国で制作した映像3部作の最後の作品が「Ao」である。潮から由来する「Shio」(2018)では、自然の摂理に逆らうかのように日本人の小さな女の子によって海に誘われ、馬たちが歩いていく姿が見られる。「Yorishiro」(2020)では、青いたてがみを持つ灰紫色の馬の着ぐるみをきた少女が、日本の都市風景の中を彷徨った末にたどり着いた島の沿岸で、馬たちと心を通わせる。「Ao」(2022)に登場する女の子は、裸足やダンス・シューズで島の荒地を探索している。そして「Shio」の少女と出会い、髪を編んでもらったりしながら一緒に遊ぶ。
彼女たちは周りの環境との繋がりによって少しずつ成長する。そうして紡がれるエネルギーとハーモニーは、この島にまつわる重苦しい歴史を乗り越えていくようだ。天使たちが時間を遡り未来を変えるように、空気中に漂うエネルギーを変換していく。