21 May 2026

西村陽一郎「小惑星」展、見えないものは、どのように像になるのか

21 May 2026

Share

Artwork-1_Asteroid_Yoichiro-Nishimura_2026-June_©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

©Yoichiro Nishimura

東京・上野のみんなのギャラリーにて、西村陽一郎の個展「小惑星」が6月4日から開催される。本展は、1989年の初期作から最新作までを通覧し、西村が40年近くにわたり探求してきた独自の視覚世界をたどる内容となる。

展覧会タイトルにもなっている《小惑星》は、一見すると宇宙空間に浮かぶ天体のように見える。しかし実際には、水を撮影した作品だ。西村は、フォトグラムやスキャングラムといったカメラを用いない写真技法を通じて、私たちが見慣れているはずの事物を異なる像として立ち上がらせてきた。そこに現れるのは、日常の延長線上にありながら、通常の知覚からはこぼれ落ちていた“もう一つの世界”である。

西村の制作の核にあるフォトグラムは、物体を直接感光紙に置き、光によって像を定着させる写真の原初的技法だ。一方、スキャングラムはスキャナーを用いて対象を取り込むことで、デジタル環境における新たなフォトグラムともいえる実践となっている。植物、水、昆虫、ヌードといった身近なモチーフは、暗室やスキャナーという閉ざされた環境の中で変容し、未知の生命体や宇宙的風景のような姿へと変わっていく。

本展では、1990年に「20 Promising Photographers」で発表された《小惑星》を起点に、2007年の《ソメイヨシノ》、2025年の《タコノマクラ》など、異なる時代の作品が並置される。青白く発光する花弁や、海辺の生物を思わせる抽象的な像は、対象そのものを記録するのではなく、その潜在的な状態を可視化している。

写真家・森山大道は、西村のイメージを「妖しく官能的で蠱惑に充ちたミクロコスモスへの旅」と評した。また写真評論家・飯沢耕太郎は、その実践をフォトグラムの歴史的系譜に位置づけている。西村の作品は、写真の起源へと接続しながら、同時に現代における新たな視覚体験を切り開いているのである。

2026年は、西村が活動を開始して40年、さらに写真集『青い花』刊行から10年という節目にあたる。本展は、その長い時間の蓄積を振り返るだけでなく、「見る」という行為そのものを再考する場となるだろう。私たちが見ていると思っている世界は、本当にその姿を見せているのか。西村の作品は、その根源的な問いを静かに突きつけている。

タイトル

西村陽一郎 個展「小惑星」

場所

みんなのギャラリー(東京都台東区東上野4-14-3 2F)

会期

6月4日(木)~21日(日)

時間

12:00~19:00

休み

月曜日

料金

無し

URL

https://www.minnanogallery.com/yoichiro-nishimura-asteroid 

Share

Share

SNS