東京・竹橋の東京国立近代美術館にて杉本博司の大規模個展「絶滅写真 杉本博司」が、6月16日から開催される。写真作品を中心とした美術館個展としては、国内では2005年の森美術館以来となる。
本展では、1970年代後半から現在に至るまでの銀塩写真作品約60点を展示。《ジオラマ》《劇場》《海景》《建築》《肖像》など、杉本を代表する13シリーズを3章構成で紹介し、その半世紀にわたる思索と実践をたどる。
展覧会タイトルに掲げられた「絶滅写真」とは、デジタル化によって終焉を迎えつつある銀塩写真そのものを指すだけではない。杉本はステートメントのなかで、「写真嘘つかない、デジタル嘘つく」と記し、写真が持っていた“証拠能力”の喪失について語る。 さらに、「銀塩写真の寿命と私の寿命とが響き合っていることに幸せを感じている」とも述べ、自らの作家人生とメディアの終焉を重ね合わせている。
展示では、初期代表作《ジオラマ》シリーズに加え、2025年制作の新作《ポコット族》や《江之浦、相模湾》なども初公開される。とりわけ《ジオラマ》は、剥製や博物館展示を撮影することで「虚像」を「実像」へ変換する、杉本初期の重要なシリーズだ。
また、《劇場》シリーズでは映画一本分を長時間露光で撮影し、白く発光するスクリーンだけを残すことで、「映画」という時間芸術を静止した光へ還元。《海景》では空と海のみで構成された水平線の風景を通じ、人類以前の時間へと視線を向ける。
近年のシリーズ《Opticks》では、ニュートンのプリズム実験を再現し、光そのものを絵画的に提示する試みも紹介される。銀塩写真の終焉を見据えながらも、杉本はなお「光」と「像」の本質へ向かい続けている。
さらに会場3階の所蔵品ギャラリーでは、「スギモトノート・海景・劇場」と題したサテライト展示も実施。1970年代半ばから記録されてきた撮影・暗室作業の覚書「スギモトノート」が初公開され、銀塩写真を成立させるための技術的工夫や職人的側面にも光が当てられる。
6月20日14時からは杉本博司、京都芸術大学教授の浅田彰、国立近代美術館主任研究員の増田玲による講演会が実施される。
| タイトル | 絶滅写真 杉本博司 |
|---|---|
| 場所 | 東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1) |
| 会期 | 6月16日(火)〜9月13日(日) |
| 時間 | 10:00~17:00(金・土曜日20:00まで) |
| 休み | 月曜日(7月20日は開館)、7月21日 |
| 料金 | 一般2300円、大学生1200円、高校生700円 |
| URL | https://art.nikkei.com/sugimoto/ |
