小林健太×ダンヒル。
2020年春夏、写真は平面を超えて、服と融合する

19 August 2019

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気鋭の若手写真家・小林健太。デジタル加工により、疾走感あふれるストリートテイストな写真作品を見せる彼のクリエイティビティは止まるところを知らない。ロンドンを代表するメンズブランド、ダンヒルからのラブコールで2020年春夏コレクションでのコラボレーションが実現した。2017年にマーク・ウェストンがクリエイティブ ディレクターに就任し、モダンに生まれ変わったダンヒルはシーズンを追うごとに新世代のダンディを生んでいる。小林のストリート感と伝統ある英国紳士はどう融合したのか?パリ、メンズファッションウィークでの発表後の7月、東京・銀座のダンヒルバーにて、小林から話を聞いた。

ダンヒルのモダニティに組み込まれた小林健太

取材当日、小林がまとっていたのは、ダンヒル2019年秋冬コレクション。シックなブラックのコートにグレーのトップス、そしてトラックパンツだ。シルエットからにウェストンによる現代的なカッティングがあふれ出している。

「アートワークが落とし込まれたアイテムを見たのはショーの前日。いろんな素材が使われていて面白かったです。マークの世界観に自分の作品を組み込んでもらいました。僕だけの物語で終わっておらず、彼の世界観と交わって、ストーリーが束ねられ、新しく練り上げられていく感覚がすごく面白い体験でした」。そう小林は振り返る。

マーク・ウェストンはバーバリーでメンズウエア部門のシニアバイスプレジデントを担っていた、男性服のエキスパートだ。約2年前、ロンドンのアートフェアで小林の作品に出合い、以来興味を持っていたという。

ダンヒル2020年春夏コレクションのテーマは、クラシシズムの破壊。精緻であり挑発的、相反する要素が混在するコレクションは、いままでのトラディショナルなダンヒルのイメージを払拭する官能性を帯びる。そのアーカイブをモダナイズする服作りが脚光を浴びているが、今回、小林が制作したアートワークは、ダンヒルのロゴやライターなどのビジュアルアーカイブと自身撮影による心斎橋店、銀座店のロゴを加工したものだ。

小林健太によるダンヒルのアーカイブビジュアルのアートワーク

小林健太によるダンヒルのアーカイブビジュアルのアートワーク

小林健太によるダンヒルのアーカイブビジュアルのアートワーク

小林健太によるダンヒルのアーカイブビジュアルのアートワーク

「自分らしいエッジが効いたストロークが採用されたのが良かった。ストロークを私のシンボルとして活動してきたので、それを生かしつつコラボレーションできたのは嬉しかったですね」

撮影した写真の世界をデジタル処理で自在に歪ませていく=ストロークするのが小林のアイコニックな手法だ。現実という3次元を写真という2次元に落とし、さらにストロークで別世界へと誘っていくその作品は、スマホアプリやプリクラなど画像へ加工することが普通となっているデジタルネイティブ世代の小林らしい。通常彼の作品ではポップな色使いのストロークが施されることが多いのだが、今回はダンヒルらしく落ち着いた大人な色調となった。

それらの加工されたイメージが、レザーのポンチョやシルクコットンのシャツ、ペーパーナイロンのハット、バッグ、ニットなどに落とし込まれている。

平面から立体、更にその先へ

アートワークを全面プリントしたレザーポンチョ。ストロークがダイナミックに走る

アートワークを全面プリントしたレザーポンチョ。ストロークがダイナミックに走る

「作品は平面ですが、服になると、人が着て立体になる。素材や形、動きなどで見え方が変わります。そこが新たな発見でした。ストロークが、体の脇を通ったりして回り込んでくるのは、初めてだったので」

ウェストンのダンヒルの要素のひとつに、日本からのインスピレーションがある。着物からインスパイアされたジャケットやコートは、彼のコレクションを象徴するアイテム。ラップ仕様となったダブルブレストジャケットの前あわせははためき、コートのアームホールは広く取られ十分な分量で優雅に身体を包む。服は着用者とともに動き、静的な写真や絵とは違う動的な美がそこにはあるのだ。

「僕の作品は運動の重ね合わせがテーマにあるんですけど、人が着て動くことによってイメージが歪んでいくことも作品コンセプトに繋がっている。ニットで編まれ、解像度が変化するアイテムも面白い。現実という立体が写真になって平面になって、それに加工を加えて、そしてそれがさらに洋服という立体になって、歪んでいくという何層ものレイヤーの連なりは、自分のコンセプトの延長にあるもの。単純なプリントTシャツなどではなく、イメージを立体的に扱ってくれるマークとコラボできて良かった。仕立てや素材など様々な要素が組み合わさって一つのスタイルになることは、とても勉強になりました。今後の作品制作にも影響しそうな体験でした」

こう生き生きと小林が話す通り、アーティストの作品をプリントしただけの通り一遍なコラボレーションではない。服とビジュアルとの高度な融合が見て取れる、アーティスト同士の協業だ。

ラグジュアリーブランドは、ヘリテージを大切にするため、特にロゴは触れられないことが通常だが、今回はロゴを引き延ばしたストロークが登場するなど、かなり寛大だったという。新しいメンズラグジュアリーを牽引するウェストンらしい一面だろう。

「歴史あるブランドのバックグラウンドを継承しつつ更新していくマークのクリエーションを見ていて、ファッションとアートはとても似ている要素があると感じました。アートも今までの歴史と文脈を背景に制作しますから。制約の中で、培ってきたものを組み合わせて作っていく行為は、まさにアーティストだと感じながらコラボレーションしました」

発売は2020年2月頃を予定している。英国のエスタブリッシュと日本のストリートな感性が融合したコレクションは、いまから待ち遠しい。

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