教えて、ヴィヴィアン・サッセン!
彼女への21の質問まとめ

17 December 2020

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ヴィヴィアン・サッセン

ヴィヴィアン・サッセンにフィーチャーした『IMA vol.34』では、読者からの質問をSNSで募り、21の質問についてサッセンが答えてくれた。学生時代に制作した作品、座右の銘、カメラ、日常生活から、美についてなどの核心を突く質問まで、多様な21の質問を通して、サッセンの人となり、そして制作の姿勢が浮かび上がってくる。ここではそこから5つのQ&Aを抜粋して紹介する。物事と常に真摯に向き合うサッセンの生き様が立ち現れてくるようだ。

Q.2 どういうときに新しいアイデアが浮かんできますか?

いい質問ですね。みんなそうだと思いますが、日常の中で出くわすいろいろなものに影響を受けていると思います。できる限りネットで情報を検索しないようにしています。あとは、旅行が一番のインスピレーション源ですね。これまで行ったことのない場所を訪れると、新しい出会いに夢中になって、固まった視点や思考がリセットされます。

Q.5 初期の頃は、どのような写真を撮影していましたか?

大学在学中の90年代初めは、荒木経惟やナン・ゴールディンの私写真的な作品に興味がありました。彼らの多くは自身の身近な環境に目を向け、スナップ感覚で撮っていて、学生の私はとても惹かれました。たくさんの機材を使って、照明でグラマラスな雰囲気を作り出すことが盛んだった80年代の後にスナップ写真が出現して、撮ること自体がとても手軽になった時代です。みんなが小型のヤシカカメラを持ち歩いて、身の回りの日常や友人を撮り、個人の生活や親密さを大切にしていました。その流れに触発されて、私も友人たち、特に女友達の写真をたくさん撮っていました。その時すでに女性の身体や顔に興味を持っていたと思います。モデルとしても働き始めていて、主に男性写真家に撮影されていた中、セルフポートレイトを撮ることは自分の身体の所有権を取り戻す感じがしたんです。だから、セルフヌードや、友人のヌード/セミヌードを、多く撮影していました。セクシュアリティや自分の女性としての立ち位置、何を表に出して何を出さないかを探索することで、自分の身体とイメージの主導権を取り返そうとしていたんだと思います。

90年代半ば~後半にサッセンが制作したセルフポートレイト作品。

90年代半ば~後半にサッセンが制作したセルフポートレイト作品。

Q.7 人間は、どんな一瞬が一番美しいと思いますか?

とても難しい質問ですね。母親が生まれたての赤ちゃんを抱いた、リネケ・ダイクストラのポートレイト作品がまず思い浮かびました。誰もが何かしら仮面をかぶって隠しているけど、例えば赤ちゃんを産んだときは弱みを見せる瞬間で、自分が人の目にどう映るかなど考えていません。他人の目を気にして自分の周りに建てた壁が、こういう瞬間に全部消える。私は、そういう一瞬がとても美しいと思います。SNSなどの影響で、常に自分のイメージについて意識させられているから、特にそう感じます。

20世紀やそれ以前の写真や映画を見ていて面白いのは、カメラのことを気にせず、何が撮られているかがわからない人たちがたくさん写っていることです。彼らは自然体で、表情もより豊かに見えます。それに対して、例えば私の姪が一番写りのいいポーズやアングルを知り尽くしていることに不安を覚えます。作り上げた自分のほうが大事になってしまっていることには、危険性を感じますね。人生において重大な出来事、誰かの死、生や身の危険に直面したときが一番自然で、本来の自分に近い姿なのかもしれません。一緒に仕事をしたモデルの中でも、とても斬新で、勇敢で、表現という旅路を一緒に歩んでくれる人もいます。醜く、変に見えることを恐れないためには、すごい力が必要だと思うのですが、彼らの大胆さのおかげで素晴らしいものが出来上がります。ロクサーヌと一緒に作った『Roxanne II 』では、彼女は突拍子もないことへの挑戦にとてもオープンでした。「あなたが言うことを何でもします」といわれて、結果とても面白いコラボレーションができたのです。

『Roxanne II』ヴィヴィアン・サッセン(OODEE、2017)

『Roxanne II』ヴィヴィアン・サッセン(OODEE、2017)

『Roxanne II』ヴィヴィアン・サッセン(OODEE、2017)

『Roxanne II』ヴィヴィアン・サッセン(OODEE、2017)

Q.9 あなたにとってファッションとは何ですか?

ファッションは私にとって、まだ完全に理解しきれていないものです。私自身が、いわゆるファッション的な服装を好まないからかもしれません。でも、ファッションの創造性は、とても大きなインスピレーション源です。身体性、表現力やクリエイティビティなど、いろいろなとらえ方ができるからです。その構造は彫刻や建築的な側面を持ち合わせていますが、人が着用し、撮り方、空気感、照明やロケーションによってはファンタジー的要素も加えることができます。私にとってファッションは、いろいろな形のアートをまとめ合わせたものですね。特に最近は動画制作の仕事をする機会も多く、音も関わってきて、とてもワクワクします。またファッションショーでは、建築、彫刻、色、マテリアルや構造などさまざまな要素が絡み合って、舞台や映画のように、全部が混ざり合うことで無限のインスピレーションが生まれます。あとはファッションの一時性も好きですね。大切に作り出しているのに、長くは残らない。こういう矛盾にとても惹かれます。

Q.11 影はあなたの作品において重要な役割を果たす要素かと思いますが、影に対するこだわりについて教えてください。

ほかの多くの人と同じだと思いますが、いつも未知の世界に惹かれてきました。散歩に行って丘があると、いつも丘の向こうに何があるかとても気になって、衝動的に行きたくなります。その好奇心が大きく関係していると思います。写真は「光で絵を描く」といわれますが、私はどちらかというと「見えない何かを写す」という考えに惹かれます。目には見えないけれど、暗闇や影を写すことで、私たちがすべてを見られないことを伝えられると考えています。そこにはまだミステリーが存在していて、自分の中や世界に存在する謎とつながりを保つことは大事だと思うのです。私たちは毎日大量の写真をインターネット上で常に目にしていますね。私たちの脳は一枚のイメージを見たらすぐに分類して、頭の無意識の部分にあるデータベースが一瞬にしてその一枚を読み解きます。そういう作用に興味があって、自分の作品では、ファッションでも混乱を招く写真を生み出すことを心がけています。同時に、矛盾を許すこと。固執しないこと。一枚でこれが私の意見だ! とならないように、迷いやパラドックス、ミステリーを同居させること。また私にとって、写真は真実を語るメディアではなく、物語に近いように感じます。私の作品には、形式的かつ審美的な要素が強いですが、核心は説明が難しく、自分の心の内や経験、考えや感情も含まれています。私が執筆家や詩人と共に作品を作る理由は、それによって物語に広がりが生まれるからです。