作家・大竹昭子が2007年に始めたトークと朗読の会〈カタリココ〉。2019年にはカタリココのトークを収録するカタリココ文庫が創刊し、6冊目の新刊である大竹昭子随想録集『超二流の写真家『センチメンタルな旅』から五十年を生きる荒木経惟』が発売された。
筆者は2016年にパリのギメ美術館で行われた「ARAKI」展を見た際に、一風変わった展示構成に大きな刺激を受けたことがきっかけで、今回の執筆に至ったという。その構成とは、『センチメンタルな旅』から現在までの流れを辿った観客が、最後の部屋で大きな仏像に出会うものだった。荒木の作品に仏教的な死生観が流れ、生と死がひとつづきのものとして見事に表現された展示は大きな話題を呼んだ。本書は「ARAKI」展を振り返りながら、50年前の1971年に刊行された『センチメンタルな旅』をもとに、今年81歳を迎えた荒木の写真の本質に迫る内容となっている。
かつて著者が荒木に行ったインタヴューでは、自身について「写真家としては超二流だけど、それでいいんだ」と語っている。そして「写真の頂点というのは実は見えているんだ。それはやらなくていいというか、いい歳になれば自然とその頂点に行くだろうと、そんな気がする」とも述べている。作家として「超二流」であり続けることにはどんな意味があるのだろうか。「いい歳」を迎えた荒木の目に「写真の頂点」はどのように映っているのだろうか。また、巻末には2021年3月に行われた荒木のインタヴューも収録されており、エネルギーあふれる写真をいまなお撮り続ける荒木の言葉にもぜひ触れてみてほしい。
タイトル | 『超二流の写真家『センチメンタルな旅』から五十年を生きる荒木経惟』 |
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発行所 | カタリココ文庫 |
発売日 | 2021年5月25日(火) |
料金 | 990円 |
仕様 | ソフトカバー/105mm×148mm/80ページ |
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