ミニマルファッションの旗手・ジル サンダーのヴィジュアル・クリエイティヴィテイが止まらない。2020秋冬キャンペーンではマリオ・ソレンティ、アンダース・エドストローム、オリヴィエ・ケルヴェルヌ、スティーブン・キッド、クリス・ローズ、リナ・シェイニウスといった魅力的な6人が同ブランド最新コレクションを撮り下ろした。
6人いずれも、現在ジル サンダーのクリエイティブディレクターを務めるルーシー&ルーク・メイヤー夫妻と親交が深い写真家。ソレンティは話題となった鳥取・島根を舞台とした2019春夏キャンペーン、ケルヴェルヌはインスタグラムアカウントでのオリジナルシューティング、シェイニウスはファッションショーのバックステージをドキュメントするなど、それぞれジル サンダーの世界観を構築してきた。
今回の撮影は世界的に蔓延する新型コロナウイルスによるロックダウン中に行われた。そのため、被写体にはモデルではなく家族や友人、ペットが登場する。半年前まで当たり前だった日常が突如崩壊し、いまだに大きな不安が漂っている現在。そのためか今回のキャンペーンはどのカットも美しいが、どこか孤独感を醸し、そして優しげだ。
ソレンティによるタンポポの綿毛を吹く女性、ローズによる白い馬の頭のアップ、シェイニウスによる静かなスティルライフ。アイテムを収めていようがいまいが、いまのジル サンダーのモダンさ、ピュアネスがヴィジュアルから匂い立つ。
DOCUMENTED BY STEPHEN KIDD
ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻により輝きを増し続けるジル サンダー。そのヴィジュアル・コミュニケーションはファッションブランドらしくない。通常、ブランドが制作するヴィジュアルはアイテムを強調するものだが、ジル サンダーはあくまで写真の作品性を重視し、アイテムが見えないこともしばしばだ。しかし、そこから醸し出されるアティチュードはどこか純粋でストリクト。いまのジル サンダーはミニマルを更に磨き上げ、ピュアに進化させている。そう、ヴィジュアルはしっかりジル サンダーのスタイルを表現しているのだ。
インスタグラムで披露される独自のシューティングプロジェクトも必見。ファッション写真とは、ブランドの空気感を表すものと実感させられる。2020秋冬キャンペーンは後に書籍化され、出版予定。服はもちろんだが、ジル サンダーのヴィジュアル・コミュニケーションも大いに注目だ。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。