東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=森屋恵美(Shelfオーナー)
『パリ、テキサス』 『ベルリン・天使の詩』そして最近では 『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』などの映画監督としてはもちろんのこと、写真家としても人気の高いヴィム・ヴェンダース。大判パノラマ写真の展覧会を世界10都市以上で開催してきた実績を持つが、この10月から来年2月にかけてロンドンのフォトグラファー・ギャラリーでポラロイド作品としては初めての展覧会が開催されている。展覧会に伴って出版された本書には、1970年代から現在に至るまでの友人や俳優ら、さまざまな場所、旅をしながら映画製作を行う日常などを撮ったポラロイド写真と、ヴェンダース本人が「写真メモ」と呼ぶ、短いストーリーやテキストが収録されている。ロード・ムービー3部作の時代の初期の旅からアメリカを経てドイツの田舎へと、ヴェンダースのロードトリップそのものが詰め込まれたような写真集。
タイトル | ヴィム・ヴェンダース『Instant Stories』 |
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出版社 | Thames & Hudson |
価格 | 7,790円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/290mm×240mm/320ページ |
URL |
ロバート・フランクが86歳になる年にスタートして以来、1~2年間隔で出版が続いているフォトダイアリー・シリーズの第6作目が出版された。写真家としての長いキャリアの中で撮った過去の象徴的な作品と、現在も撮影を続けている個人的な写真を組み合わせ、ロバート・フランク自身が構成にも携わって作り続けているという。ニューヨークのブリーカー・ストリートにある自宅室内、ノーヴァ・スコシアのマブーの家の周りの風景、妻のジューン・リーフ、友人などを撮った写真や古いポストカードを、スクラップブックのようにさらっと配置して作られた1冊からは、過去の時間がいかに現在のロバート・フランクを作ってきたかがわかるのみならず、本作りがいかに彼の人生を形作っているかが見て取れる。
タイトル | ロバート・フランク『Leon of Juda』 |
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出版社 | Steidl |
価格 | 4,670円+tax(輸入書籍につき円価は変動) |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/250mm×210mm/52ページ |
URL |
第4回木村伊兵衛写真賞受賞作 『APARTMENT』から10年弱の年月を経た頃、新たな縁から石内都が撮り始めたのが取り壊し直前の互楽荘アパートだった。昭和初期に建てられかつては人々の憧れるモダンな共同住宅であった互楽荘は、終戦後、赤線第一号に転用されたという歴史を持つ。この建物の影の濃さに、何かが引っかかり足を止めずにいられなかったという写真家は、すでに廃墟化した互楽荘が取り壊され完全に消滅してしまうまでのわずかな時間を写真に収める。干からびてめくれ上がった塗装、割れたタイル、垂れ下がる配線、古い生活用品と瓦礫が入り混じって堆積する床…。幾重にも染み込んだ人々の記憶が、剥がれ落ちては積み重なり、埋もれ、その痕跡さえも消去される運命を待つつかの間の建物。その後写真家の撮影対象が身体の傷跡や遺品へと移っていく中で
タイトル | 石内都『yokohama 互楽荘』 |
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出版社 | 蒼穹舎 |
価格 | 3,800円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/A4変型/76ページ |
URL |
Shelf
外苑前にあるブックショップ。写真集を中心とした洋書を専門に取り扱っており、店内には希少な本から絶版書までさまざまなジャンルの写真集が所狭しと並べられている。
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-7-4
tel / fax: 03-3405-7889
http://www.shelf.ne.jp/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。