このたびIMA gallery では、8月20日(月)~10月5日(金)まで、水谷吉法による新作「HDR_nature」を展示いたします。
一見、抽象絵画のようにも見える「HDR_nature」は、水谷がカメラの最新テクノロジーを使って、これまでにない自然写真に挑戦した作品です。誰もが写真を撮ることができる現代において、普遍的かつ身近なテーマである「自然」をとらえた写真は数限りなく存在し、新しいものを生み出すのは容易なことではありません。
水谷は豊かな自然に囲まれて育ったそのバックグラウンドから、これまでも、現在の生活拠点である東京の自然をテーマにした作品シリーズを制作してきました。1970年代にスリランカからペットとして輸入されたインコが、東京で野生化し大量発生した姿を追った「Tokyo Parrots」、川や池などに群れで棲みつく小さな虫にストロボを当て、白く反射した小さな光玉に変貌させることで、都会で目にする自然を幻想的な姿へと昇華させた「Yusurika」が代表作として挙げられます。同時に、日常生活の中に潜む美しさ、印象的な色や興味をそそる造形に目を向け、それらをグラフィカルなイメージとして切り取るのも水谷による写真の特徴のひとつです。
水谷の新境地ともいえる「HDR_nature」は、タイトルが表すように「HDR(ハイダイナミックレンジ合成)」という、露出の異なる複数のカットを撮影し、その中から良い部分を抽出して合成することで、肉眼での見え方に近い一枚に仕上げる最近のデジタルカメラに搭載された機能を用いています。水谷はわざとカメラを動かして撮影することで、カメラがブレた瞬間の複数のイメージを自動的に組み合わせ、見たことのないイメージを生成することを狙って制作しています。こうしたデジタル技術を独自の手法で利用したこのシリーズは、常にテクノロジーの進歩とともに歩んできた写真表現に、また新たなるページを加えました。
「この作品は、カメラを利用し可視世界を超えた未知のイメージを生成・探求をすることを目的としている。HDRと呼ばれる、露出を変えた3枚の写真をカメラ内で自動的に合成処理する最新のデジタル写真技法を意図的に使用して制作するのだが、撮影の特性上、最終的な仕上りはカメラに委ねることになる。さらにカメラを動かしながら撮影することによって、自らが意図しないイメージが生まれる。これは、新たなイメージを発見する方法であると同時に、写真の可能性を発見しようとする試みでもあるのだ。」―水谷吉法
タイトル | 「HDR_nature」 |
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会期 | 2018年8月20日(月)~10月5日(金) |
会場 | IMA gallery(東京都) |
時間 | 11:00~19:00 |
休廊日 | 日曜・祝祭日 |
観覧料 | 無料 |
イベント | 8月23日(木)19:00~21:00:オープニングパーティ&ブックサイニング |