2017年はどんな写真集が売れたのだろうか? 昨年7月から4店舗のおすすめ写真集を毎月紹介しているこのコーナーでは、新年特別号として2017年の売上ベスト3を紹介。昨年の写真集のトレンドが見えるラインナップに注目してみよう
セレクト・文=森屋恵美(Shelfオーナー)
1986年に蒼穹社より出版された深瀬昌久『鴉』の復刻版。妻と離別し旅する中で撮られた写真で構成された深瀬昌久のこの代表作は、過去にも二度限定復刻されたものの長らく新本では入手できない写真集となっていたが、昨年イギリスにて再度復刻された。繰り返し現れる鴉をモチーフとした作品は現実と心象風景が入り混じったようなイメージで、切々と暗くそして美しい。オリジナル版を手がけた長谷川明のテキストに加えて、深瀬昌久アーカイブスのトモ・コスガのテキストが新たに収録されている。
タイトル | 深瀬昌久『Masahisa Fukase: RAVENS』 |
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出版社 | MACK |
価格 | 10,000円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー・クロス装・スリップケース付き/260mm×260mm/136ページ |
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こちらもまた名作の復刻写真集。マグナムフォト所属の写真家アレック・ソスがアメリカの中でもカナダに近いミネソタからミシシッピ川に沿って南へと向かう旅の中で撮った作品。地理的には合衆国の中心部に位置するにも関わらずメディアや報道からは置き去りにされがちなこれら地域の「リアル」な風景や人々は、どこかはかなげで夢のようですらある。雪原に干された洗濯物や模型飛行機を手にする飛行服姿の男など印象的なイメージが収録され本書は、2004年にオリジナルが出版された後も二度再版されるもすぐに(かつ静かに)完売。手に入らないときのほうが多かった。その間にアレック・ソスの人気もさらに上昇し、昨年満を持しての復刻となった。
タイトル | アレック・ソス『Alec Soth: Sleeping by the Mississippi』 |
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出版社 | MACK |
価格 | 7,500円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/280mm×270mm/120ページ |
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2017年は復刻版の当たり年だった。人気タイトルの復刻が相次ぎ新作を凌駕して売れた1年だった。復刻のビッグタイトルと言えばこちらも。リチャード・アヴェドンが『Observation』に続いて出した第2番目の写真集であり、ジェイムズ・ボールドウィンの文章とともにアメリカ社会が抱える複雑さと矛盾をテーマとした1964年出版の名著『Nothing Personal』。コレクターズアイテムの定番のひとつであったこのタイトルがオリジナルにかなり近い形で復刻出版された。しかも本と同サイズで写真入りのきれいな解説ブックレット付というところも意外と喜ばれた。
タイトル | リチャード・アヴェドン、ジェイムズ・ボールドウィン『Richard Avedon & James Baldwin: Nothing Personal』 |
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出版社 | Taschen |
価格 | 10,110円+tax(輸入書籍につき円価は変動) |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/360mm×270mm/160ページ |
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Shelf
外苑前にあるブックショップ。写真集を中心とした洋書を専門に取り扱っており、店内には希少な本から絶版書までさまざまなジャンルの写真集が所狭しと並べられている。
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-7-4
tel / fax: 03-3405-7889
http://www.shelf.ne.jp/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。