3 August 2021

川内倫子の日々 vol.7

変わるもの、変わらないもの

3 August 2021

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川内倫子の日々 vol.7「変わるもの、変わらないもの」 | 川内倫子の日々 vol.7

変わるもの、変わらないもの

アシスタントはいないんですか、と、よく聞かれる。アシスタントとして働きたいのですが、というメールやインターンで働かせてほしい、というメールも時々届く。自分としては専属のアシスタントは必要なく、時々撮影で荷物の多いときにお願いすることがあるくらいで十分なのだ。それもなるべく近しい人や、何度か頼んだことのある人、もしくは信頼できる人の紹介のほうがいいので、結果的にいつもそのメールの申し出はお断りしている。

そういったお断りの返事や仕事の依頼などのやりとりはマネージャーにお願いしている。時々メールでやりとりしたあとに初めて会う人は、マネージャーのことをアシスタントだと思っている方もいるが、彼女は撮影のアシスタントは基本的にはしない。たまに撮影についてきてもらったときに荷物を持ってもらうこともあるが、その機会も多くはない。

彼女と一緒に仕事をするようになって約20年近くになる。ずっと同じスタイルでやってきたわけではないし、数年離れていたこともある。いつの間にかいまの関係に落ち着いたのだが、やはり長いあいだ自分の仕事を見ていてくれた人だからこその信頼感は何者にも変えがたい。物理的な作業を助けてくれるだけではなく、作品の展示や編集作業で悩んだときにすぐに相談できること、依頼の仕事を引き受けるべきかどうかなど、一緒に判断してくれる心強い存在なのだ。

そのマネージャーに娘はとても懐いている。しょっちゅう会うわけではないが、相性がいいみたいだ。先日、彼女の新しく引っ越した家に遊びに行ったときも、まとわりついて離れなかった。そして自分をサポートしてくれる一番身近な人たちである、自分の母親と彼女の誕生日が同じ日なのは、ただの偶然なのだろうけれど、不思議な巡り合わせを感じる。

ふたりが並んで手をつなぎ、山道を歩いている後ろ姿を見ていると、これからも一緒に歩きながら色々な景色を楽しめたらいいなと、ふと思った。

今月車を乗り換えることになった。いままで使っていた14年間乗りつづけた車は時々撮影などを手伝ってくれる友人に引き継いでもらうことになったので、新しい車を引き取るタイミングで彼に渡すことにした。機能重視で選んだ車だったから、デザイン性に優れているわけでもなく、特別に愛着がある車というつもりではなかったが、14年間ともに過ごしたので思い出はたくさんある。14年の間に何度か引っ越し、その度にその車で移動した。何度も一緒に乗った人たちとの別れがあり、そのうちに夫が運転するようになり、子どもが生まれて初めて一緒に産院から乗って帰ったことも思い出した。子どもを抱えながら車窓から見える景色は、見慣れた風景なのにすべてが新しく見えたことも。

引き渡しの日、この車にまつわる思い出話を彼に聞いてもらっていたら段々とこの車との別れが寂しいような気がしてきた。いままで大きな事故もなく、ありがとう、という気持ちが湧いてきて、長い月日をともに過ごすとそうなるんだなあと思い、でもこの車を引き継ぐことを喜んでくれる彼の笑顔を見ていたら、とてもすがすがしい別れだった。人との関係ではなかなかそうはいかないのだが。

川内倫子の日々 vol.7

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