石田真澄が愛するフィルムカメラ“写ルンです、KLASSE…で光を掴んできました”

私と愛機 vol.6 ~旬のフォトグラファーとカメラの関係~

5 January 2021

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石田真澄が愛するフィルムカメラ“写ルンです、KLASSE…で光を掴んできました” | 石田真澄

若手写真家として、広告や雑誌などを中心に活動する石田真澄。彼女の写真は、フィルムカメラで撮影された瑞々しく輝く光に特徴づけられる。今回は、彼女の愛用するフィルムカメラとの出会いや独特の光への意識、そして高校生でデビューした当時のことを振り返りながら、クリエイターとしての彼女自身の立ち位置について尋ねた。

文=村上由鶴
写真=御座岡宏士

コンパクトフィルムカメラとの出会い

―これまではどのようなカメラを使って来られたんですか?

中学校に入って始めてガラケーを持って、携帯で毎日写真を撮れる環境になったときに「写真って楽しいな」と思いました。中学の途中でLUMIXのデジタルカメラを買ってもらって、そこから自分のカメラを持ち始めました。高校生になってからは、学校で海外研修に行くタイミングがあったので、そのLUMIXと、あと何か違うカメラを持っていきたいなと思って写ルンですを買って、そこからフィルムカメラを使い始めました。大学に入ってからは仕事をするようになって、色々なカメラを試して使っています。

―コンパクトフィルムカメラはいくつか使い分けているんでしょうか。

家族がカメラ好きというわけでもないので、最初はたまたま家にあったフィルムカメラを使っていました。そのあと、知り合いのカメラマンの方からいた頂いたカメラをいまも使っています。押すだけで撮れるような簡単なカメラも好きですし、絞りを変えられるコンパクトのFUJIのKLASSEも使っています。

KLASSE

―フィルムの選び方にはルールはありますか?

結局いまはフジのPRO400Hに落ち着いています。私は少し青い写真が好きなので、青みがかった感じで撮りたいときはPRO400Hを使いますね。

―写真の中の光は石田さんの好きなモチーフでもあり、作品でもテーマになっていると思います。ハレーションが起こっているような写真も多いですが、撮影中はファインダーから見えていなかったりすると思うんですけど、どのような感覚で撮影されているんですか?

意外と撮っているときに見えていたりもします。例えばこれ(写真下)は、真上に太陽があるときに撮れるんですけど、意図的に撮ることも多いです。12〜14時の時間帯はこうなりやすいので、好きでよく撮ります。CONTAX G2はそれがきれいに出やすいので使っていますね。

『everything will flow』(2019年、TISSUE Inc.)より

―では、光の演出は計算でやっている部分が大きいんでしょうか。

「このとき、光がこうなるな」っていうのは、だんだんわかってきたので、意図的に作れるようにはなってきました。仕事ではないときは、光がただただ好きで撮っていますね。最初は、たまたま友だちを撮った写真がこうなっているのを見て「なんでこうなったんだろう?」って思っていたんです。回数を重ねて撮り方がわかってきました。


まず光に反応してシャッターを押す

―光が好きで撮っているとおっしゃいましたが、石田さんが写した人物の写真は、人間が発光しているように見えるというか、「人が光っている!」と感じます。

それはすごく理想的で、人に光があたっている瞬間だけを撮りたいと思っているから、そういっていただけるのは嬉しいです。基本的には直射日光が人にあたっているのが好きなんですが、まぶしくて目を開けていられないという被写体の方も多いんです。自分はもう「光を当てなくちゃ!」みたいな気持ちになっているので、撮られる方が涙が出てきちゃうときもあって。自分がその立場にいたら、絶対目を開けてられないと思うんですが。撮ることに夢中で、眩しいことを忘れちゃっているんですよね(笑)。

―撮っている最中の感覚として、構図や表情といった光以外の要素は、あまり意識されていないということなんですか。

表情より光が入っているかを優先してしまって、全然いい表情が撮れてないときもあります。構図と光がすごくきれいなのに半目とか(笑)。光に意識がいって、その人がきれいな瞬間よりも、その人に当たる光がきれいな瞬間を無意識に優先してしまいます。

例えば『light years -光年-』の表紙は、制服のリボンが撮りたいというよりは、光が撮りたくて撮っています。光がないと撮らないことがほとんどです。だから、逆に光に惹かれて写真を撮ったあとに見返して「あ、これ写ってたんだ」ってなるくらい。ものに興味があるというよりは光に興味があって撮っていますね。何が写っているかは、意外と見ていなかったりすることが多くて。

『light years -光年-』(2018年、TISSUE Inc.)

『light years -光年-』(2018年、TISSUE Inc.)

この写真(写真下)とか、この男の人にあたっている光と、逆光で写っているのがすごくきれいだと思って撮っているのですが、側に女の人がいることに気がついていなくて。編集の方には「女の人が男の人のひざに寝そべっているようにしているのがよかったから撮ったんじゃないの?」っていわれたんですけど、そういわれて、写真集が出来上がった後に知りました。「え?女の人いた!」みたいな(笑)。

『everything will flow』より

『everything will flow』より

―背景に光の形がはっきりと見えるような、陰影がはっきりした写真も拝見して、石田さんの写真の光には、いくつか種類があるなと思いました。

陰影が強い写真の方が多いかもしれません。光の中に光があるような陰影がない写真も好きです。陰影をつけるのも、明るい中にある光も好きなので、半分ずつくらいかなと思ってます。でも、それも被写体の方の印象によって使い分けたいですね。

石田真澄

―光に対して、「この光にはこのカメラ」っていうデータがあって、それによってカメラを選んでいるのでしょうか?

私は人を撮ることが多いので、「こういう人だから、こういう光がいいから、このカメラ」っていうふうに自分の中で選択肢ができています。チープに撮りたいときはコンパクト(フィルムカメラ)で、もう少しシャープに撮りたいときはKLASSE。中盤もたまに使いますが、写りも色合いも変わるので、段階的に使い分けています。

―チープに撮りたいという感覚も光から来るのでしょうか。

これ(写真下)は水中カメラで撮りました。たぶん、中身は写ルンですと同じで、プラスチックのカバーがかかっているフィルムカメラなんですが、これを使うと光の粒が荒く出ます。フレアも線が多くなる。細かい綺麗な線というよりは、線がしっかり出るので、それを意図的に使うこともあります。

『everything will flow』より

『everything will flow』より


デビューしてから変わらない写真へのスタンス

―石田さんの作風はガーリーフォトと結びつけて語られることもあるかなと思います。それについてはどう感じていますか。

雑誌や広告が好きだったので、商業的な写真を撮る写真家の方のほうが詳しかったくらいで、写真集を見るようになってから作家の方を知りました。今年の初めに、長島有里枝さんの『僕らの「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』(2020年、大福書林)を読みました。

―あの本で書かれていたようなことが、再び起こるかもしれない懸念はありますか?

私が中高時代に撮った写真を写真集にしようといってくれた編集の方は男性だったんですが、丁寧に、ぶれないように道筋を作ってくださった。制作意図は『light years -光年-』と『everything will flow』の中に書いてあるんです。この文章があるかないかで全く違う写真集になっていたと思います。

例えば、デザインをして、セレクトして、タイトルつけて、っていうのを19歳のときに全て自分でやっていたら、絶対に違う方向に行っていたと思います。自分が消費されるであろうということがわかっていても、消費されないように世に出すことって自分一人じゃ絶対にできなかったんじゃないかと。編集者がいてデザイナーがいる。第3者が入った写真集を出すということが大切で、意味があったと思います。

石田真澄

―石田さんは何か作りたいものがあったり、メッセージを伝えるために写真を撮っているわけではないんでしょうか。

作品に対して、伝えたいメッセージがある作家の方も多いと思うのですが、それがほとんどなくて……。写真を自由に受け取って欲しいんです。なので、私からはほとんどメッセージを明示しないです。自分も写真集を見ているときに、救われたと感じるようなすごくいい気持ちになるものっていくつかあるんですけど、たまたま自分のそのときの気持ちと合わさって豊かになったという感じ。だから私も、見る人がその人のタイミングで開いて、きれいだなって、清々しい気持ちになってくれたらいいなと思いますね。写真一枚、一枚には、このとき楽しかったなとか、このときの光がきれいだったから撮ったっていうのはあるんですけど。いま出している作品には大きなメッセージを込めていません。

―というと、石田さんにとって写真集は、「いいな」って思った瞬間を集めた「感動の束」ということでしょうか?

そうです!本当にそうなんです。私は作家とは違う立場なんだろうなっていうのは、他の方の作品を見ていて感じています。他にも私のような考えの人はいると思うのですが、なかなか理解されるのは難しいかもしれないですね。

石田真澄

―仕事で撮るときのモチベーションと、普段の日常的に撮っているときの気持ちはあまり変わらないんですか。

変わらないですね。変わらないようにしたいです。それが理想なので。でも、ほとんど変わらないんじゃないかなと思う。撮ること自体が好きですね。

―アーティストというよりは、フォトグラファーや写真家として活動したいということだと思いますが、しっくりくる肩書きはありますか?

普段自分が撮っている写真は一番好きで、それをどこかに出していきたいなという気持ちはあります。でも、もともと雑誌や広告が好きだったので、その仕事はずっとやっていきたいです。そう考えると真ん中の立場がいいなと思います。作品も出しつつ、仕事もコンスタントにやっていきたいですね。

石田真澄

石田真澄|Masumi Ishida
1998年、埼玉県生まれ。2017年5月に自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年、初作品集『light years -光年-』をTISSUE PAPERSより刊行。2019年8月、2冊目の作品集『everything will flow』を同社より刊行。雑誌や広告などで活動。