2020年に紹介した写真集
テーマ別まとめ「トラベル」

7 January 2021

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2020年に紹介した写真集テーマ別まとめ「トラベル」 | 2020年に紹介した写真集テーマ別まとめ「トラベル」

旅に行きたくても、制限が多い現在はしばらく行くことは難しいだろう。そんないまだからこそ、写真集を通してヴィジュアルトリップに出かけたい。昨年紹介した中から、旅にまつわる写真集をピックアップ。インスピレーション溢れる写真を通して想像の旅を味わってみよう。

ルイ・ヴィトンの写真集『シティーズ・オン・アース』『ファッション・アイ』(2020年)

シティ・ガイドをベースとした写真集『シティーズ・オン・アース』では、フランスの写真家集団タンダンス・フルーが撮り下ろした。同集団の14名がこのプロジェクトに参加し、2012年から30都市に55回赴き、自らの足で各都市のいまをシャッターに切った。今回は東京、パリ、上海、ニューヨーク、ローマなど13都市の今が浮かび上がる。力強く、個性的な市井の人々。圧倒的スケールのビル群や歴史的建造物。写真家たちの徹底的なリサーチから各都市のエネルギーが伝わってくる。日本に目を向けると、特にモノクロで撮られた夜の歌舞伎町の入り口は、ネオンが浮かび上がり、魔境への誘いのようで美しい。

『シティーズ・オン・アース』

「ファッション・アイ」のシリーズでは、今回『ギリシャ by フランソワ・ アラール』と『ウクライナ by シンクロドッグズ』の2カ国がラインナップ。アラールの個人的なギリシャでの旅がつづられた一冊の中で、古代の彫刻や石でできた構造物、大地から立ち上がるような風景で満たされる。もう1冊のウクライナは、シンクロドッグズの2人、ロマン・ノヴェンとタニア・オールドヨークの故郷カルパティア山脈の自然にヌードを取り込んだ写真集。人の身体を通して森林伐採への警告を謳う。どれも幻想的であり、ファッション写真のように目を引く。

『ギリシャ by フランソワ・ アラール』

『ウクライナ by シンクロドッグズ』


写真家が母親になる前に見つめた自分のルーツを辿る旅、アンネマリーク・ヴァン・ドリンメレン『TADAIMA』(Libraryman、2020年)

オランダ人フォトグラファー、ドリンメレンが初めてカメラを手に入れたのは10歳のとき。亡くなった母親のカメラを受け継いだ彼女は、写真に取り組むことによって母を少しだけ身近に感じることができたという。初めて母親になるときが近づき、ドリンメレンはこの精神的なアプローチに再び立ちかえる必要性を感じたという。そこからアリゾナ、カリフォルニア、パリ、アムステルダムを巡る旅に出て、小さな瞬間を写真に収めていった。本書には、故郷に向かう旅に伴う心の痛みとその美しさを写し出した、親密な空気感をもつポートレイトが収録されている。また、サイアノタイプを自ら手刷りすることによって、母親が愛した青を思い出せる限り忠実に再現することが試みられた。


車を通して地球という星を体感するダイナミックな1冊、瀧本幹也『5大陸 Trails Into the Unknown』(青幻舎、2020年)

チャリティー版/サイン入りオリジナルプリント一枚(5種類より選択)

チャリティー版/サイン入りオリジナルプリント一枚(5種類より選択)

“TOYOTA 5大陸走破プロジェクト”が生んだドキュメントフォトブック『5大陸 Trails Into the Unknown』。本プロジェクトの立ち上がりから参加し、人とクルマの旅に同行していた写真家・瀧本幹也をはじめとしたクリエイターチームが撮り溜めたドキュメントが、新たなコンセプトで1冊のフォトブックとしてまとめられている。


都市化するイタリアの田園地帯を収めたランドスケープ、グイド・グイディ『IN VENETO, 1984-89』(MACK、2019年)

1984年から1989年の間にディアドルフ8×10で撮影された未発表作品が収録された1冊。本作のテーマであるヴェネト州中心部のとある地域は、あるときから急速に変化したことで知られ、うつろいやすく不安定なランドスケープが姿を現し、ヒエラルキーのない自由な空気が流れるようになった。無秩序な都市の拡大という変化のプロセスは、イタリアの広々とした田園地帯に深い爪痕を残した。グイデイはトレヴィーゾ、ヴィチェンツァ、パドヴァそしてヴェネツィアとさまざまな場所を訪れたが、どのイメージもまるで同じドローイングの一部でもあるかのように一様に表れている。


サハラ砂漠地帯を歴史的・地理的に検証する、フィリップ・ドュドイト『THE DYNAMICS OF DUST』(Edition Patrick Frey、2019年)

歴史的、地理的、政治的な観点から、また地図作成の記録の徹底的な考証、研究、分析に基づいて制作された写真集。本書に収められたプロジェクトは、2008年以降のサヘル・サハラ砂漠地帯の社会政治的革命というテーマを写真でとらえた長期的な研究で、遠い昔からサヘル・サハラ砂漠地帯で遊牧生活を営んできた先住民が、自由あるいは安全に移動できなくなってしまった土地との間に築いた新しい関係性が記録されている。アナログの大判カメラのテクニックとデジタルテクノロジーを融合し、さらに革新的なドキュメンタリー写真の感性と環境をテーマとするポートレイトのタブロー的な画面構成を組み合わせることによって、この混成文化を写真で表現した。