2020年に紹介した写真集テーマ別まとめ「ポートレイト」

8 January 2021

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2020年に紹介した写真集テーマ別まとめ「ポートレイト」 | 2020年に紹介した写真集テーマ別まとめ「ポートレイト」

IMA ONLINEで昨年紹介した中から、ポートレイトにまつわる写真集5冊をピックアップ。落語と写真のコラボレーションから、写真表現における性別役割分担への抵抗としてのセルフポートレイト、ルワンダで起こった悲劇について世代を超えて追った作品まで、多彩なテーマから、ポートレイト写真の面白さに改めて出会えるはず。

独特の世界観で世界を魅了する マーリア・シュヴァルボヴァー『FUTURO RETRO』(青幻舎、2020年)

© Maria Svarbova for NHP Publishing

© Maria Svarbova for NHP Publishing

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本作「FUTURO RETRO」は、古風な情景の中にサイエンスフィクションの香りが漂うシリーズ。新しいものと古いものをブレンドする視点で生まれる予期せぬハーモニーは、どこか懐かしい空気感が漂う独特な世界観へと読者を誘う。本書では「FUTURO=未来」「RETRO=過去」という作品を象徴する二つのラテン語を用いたタイトルのもと、12シリーズを収録。マーリアが現在のスタイルを確立した2014年から直近までの活動を網羅する1冊となっている。


落語と写真のスリリングな格闘、
大森克己『心眼 柳家権太楼』(平凡社、2020年)

心眼 柳家権太楼

初代・三遊亭圓朝が生み出した、古典落語の名作『心眼』。あんま師・梅喜の薬師様への願掛けの思いが叶って、目が見えるようになると……。本書では大森が古典落語の名人・柳家権太楼の口演、その一部始終を撮影。見えること/見えないことをめぐる「落語」と「写真」のスリリングな格闘に出会える一冊。


長らく育まれてきた写真表現における性別役割分担への抵抗
長島有里枝『SELF-PORTRAITS』(Dashwood Books、2020年)

2017年の東京都写真美術館での個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々」で展示された新作のひとつに、1992年にバックパッカーとして旅をしていた学生時代のモノクロ作品から始まり親となってからも撮り続けられた24年分・約700点のセルフポートレイトのスライドショーが流された。本作はそこから作家本人が選び抜いたものを集めた一作。


世代を貫く傷と葛藤を現在に伝える
ジョナサン・トーゴヴニク『あれから——ルワンダ ジェノサイドから生まれて』(赤々舎、2020年)

本書は、2010年に刊行された『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』の続編。『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』は、ジャーナリストのジョナサン・トーゴヴニクが、1994年にルワンダで起きたジェノサイドの際、性暴力によって出産にいたった母親にインタビューし、その母子のポートレイトとともに収載した1冊。12年後、トーゴヴニクは当時会った家族のもとを再び訪れ、母親、そして今回は子どもたちへのインタビューも行った。成人した彼らは、「殺人者の子ども」と呼ばれながら生きてきた日々を初めて語り、12年前と同じ場所で撮られた母子のポートレイトは、十分には報道されてこなかったそれぞれが経た時間の重さをとらえている。


少年少女たちの心の揺らぎをとらえる、マーク・シュタインメッツ『SUMMER CAMP』(Nazraeli Press、2019年)

アメリカ人写真家、マーク・シュタインメッツの写真集『SUMMER CAMP』は、ひと夏のあいだ親元を離れてサマーキャンプで過ごす少年少女たちの心情に迫った1冊。サマーキャンプといえば寝袋、小屋、キャンプファイヤーがつきもので、それらは1990年でも1965年でもほとんど変わりはない。小さな子どもが笑ったり泣いたりするのとは違い、8歳から12歳くらいの少年少女がそういった感情を露わにするときには痛切な感覚が伴っており、彼らが大人になることによってまったく別物になってゆく。本書に収録された写真の多くは「特定の状況に置かれた子ども」であることの辛さがテーマになっている。