昨年はコロナ禍の為、惜しまれながらも中止となった世界最大の国際写真フェア、パリフォト。今年は再び世界中から多くのギャラリーが参加し、復活を果たした。日本ではまだフェアなどの大規模イベントの開催が模索中ではあるが、パリではどのような形で実現に至ったのだろうか。パリフォトと同期間に開催された写真系イベントと合わせて、その様子を現地から全3回でレポートする。
写真・文=糟谷恭子
満を持しての開催となった今年、指揮を執ったのは2015年にパリフォトのディレクターに就任したフロロンス・ブルジョワだ。ブルジョアは39歳のときに大学に戻り、美術史を学び始め40代からアートシーンで働き始めるという異色のプロフィールを持つ。パリフォトで発表される作品の内、女性写真家が占める割合が全体の25パーセントに過ぎないという事実を知った彼女は、過去4年間女性作家の作品をメインイメージとして起用している。今年はアメリカ人の女性写真家バーバラ・モーガンの作品が選ばれた。
今年のメインイメージとなったバーバラモーガンの作品。
BARBARA MORGAN American Document (Trio), 1938, Barbara and Willard Morgan photographs and papers, Library Special Collections, Charles E. Young Research Library, UCLA Courtesy Bruce Silverstein Gallery, New York
2018年から始まった若手新鋭作家を応援するプログラム「Curiosa」でも、今年は53パーセントの割合で女性作家を選出するなど、女性作家が写真のマーケットに進出しやすくなるよう積極的に働きかけをしている。また、コロナ禍の影響で世界的に広まったオンラインフェアも同時開催。パリに訪れることのできない人たちも、オンラインで作品がチェックできるような試みが行われた。
日本からはThe Third Gallery AyaとMEMギャラリーが参加。The Third Gallery Ayaは、今年のパリフォトの趣旨に沿うように、女性作家の展示を企画。サンフランシスコ在住の写真作家、兼子裕代が10年をかけて歌う人を撮り続けたシリーズ「APPEARANCE」をパリで初披露した。
パリフォトの名物ともいえる大御所作家の銀塩写真プリントが並ぶ一方、挑戦的なインスタレーション作品を展示しているギャラリーも多くなってきたようだ。
PHOTOBOOKセクションでは毎年恒例の「Paris Photo–Aperture Foundation PhotoBook Awards」のノミネート写真集が並ぶ。今年刊行されたさまざまな素晴らしい写真集やカタログが並び、絶えず人が訪れては、選りすぐりの作品を手に取り真剣に鑑賞していた。
さまざまなジャンルの出版社が出展するPUBLISHERSセクションでは、笑顔でのやりとりが多く見られコロナ禍とは思えないほど賑わっている。
André Frère Editionsのブースでは、ポップでスタイリッシュな作風で有名なコウトニー・ロイのブックサイニングが行われ、Atelier EXBのブースでは、ドキュメンタリー写真で知られるマット・ブラックが忙しなくサインをしている。作家と直接話し、本を購入できるのがリアルなフェアの醍醐味だ。
コロナ禍において渡航が制限される中でも、ヨーロッパから来客を中心にパリフォトは活気にあふれ元の姿を取り戻しつつある。さまざまな困難を乗り越えて、パリが再び写真に染まった。
>パリフォトレポート Vol.2「写真集ファン必見の船上のブックフェア Polycopies」
>パリフォトレポート Vol.3「コロナ禍で生まれたPhotoDays」