この雲の中に何が見えますか?
「Covariance」はラファエル・ダラポルタが写真、科学、および宇宙の歴史的な関係性と理論的な繋がりについて探求したプロジェクトの中心となる作品です。ダラポルタは過去3年間、フランスの宇宙観測センターおよびフランス国立宇宙研究センター(CNES)によって組成された「創造と宇宙のイマジネーション」プログラムに参加してきました。今回の作品は、彼が1年間滞在したヴィラ・メディチ(ローマにあるフランスの教育施設)で制作され、フランス人の数学者であるアレクサンドル・ブルーストとの密なコラボレーションによって実現したものです。
「Covariance」は48の数式モデルによる壁画コンポジションです。それぞれのイメージは、雲の一部として相似しています。そして、それらはフランスのル・マンにあるMaine大学の研究室で、「Covariance」もしくは「予見性を表現したアルゴリズム」として知られる計算式によって作成されました。この計算式により、宇宙空間に無数のドットが組成され、それぞれは見る角度により濃くなったり薄くなったりします。さらに、48点の壁画の組み合わせは、実は4点の写真からなる12のグループに分けられます(4点のイメージは数式のたったひとつのパラメーターの違いにより非常に近い形を形成しています)。「Covariance」は「物質の形による分類」と「同一テーマについての表現のバリエーション」の間に位置づけられます。
雲は歴史的に多くの写真の被写体となってきました。また、雲は科学者(フランス人のルース・ルバール)がつい最近になってやっとその成り立ちを解明した物体です。ダラポルタは、歴史的に人類が宇宙を観察してきたことに魅了され、こうした写真と科学的な研究の中間に位置する課題に、彼の記念碑的な作品を捧げています。
ダラポルタは今回の作品を、古典的で非常に珍しいプロセス(48点のサイアノタイプとプラチナ&パラジウムプリント)で制作し、「Covariance」というタイトルを付けたことにより、Alfred Stieglitzの歴史的なシリーズである「Equivalent (1925-1931)」(雲の暗示的な役割を示す)に言及しています。
最後に、「Covariance」の全体のプロジェクトはある比喩を意味しています。現代のデジタルネットワークは、可能性を「クラウド」サーバーにある無限のデータから計算しています。私たちは雲の研究により何を学ぶことができるのでしょうか? ダラポルタ は「幻想以外の何者でもない」と答えるでしょう。
Courtesy of the artist and Jean-Kenta Gauthier
1 in “Les Archives du Ciel : la photographie scientifique des nuages”,
Etudes Photographiques n°1, Paris, November 1996
タイトル | 「Covariance」 |
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会期 | 2017年10月25日(水)~12月8日(金) |
会場 | IMA gallery(東京都) |
時間 | 11:00~19:00 |
休廊日 | 日曜・祝日、11月4日(土) |
ラファエル・ダラポルタ|Raphaël Dallaporta
1980年パリ生まれ。2000年パンテオン・ソルボンヌ大学を卒業後、パリの名門ゴブラン・スクール・オブ・ビジュアル・アート(2000~2002年)、イタリア・トレヴィゾにあるコミュニケーション・リサーチ・センター「ファブリカ」(2002~2003年)にて学ぶ。2009年ヨーロピアン・セントラル・バンクアワード受賞(ドイツ)。2010年インフィニティ・アワード受賞(ニューヨーク)。2011年Foam Paul Huf Award受賞(オランダ)。2014~2015年、フランス国家選出によるローマ賞受賞にともないローマのヴィラ・メディチに滞在。ヨーロッパをはじめ、ニューヨーク、ロシアなど各地で個展を開催。主な作品集に『Antipersonnel』、『Ruins』、『Fragile』、『Domestic Slavery』がある。