品川の原美術館が2021年1月をもって、42年の歴史に幕を閉じる。緑に囲まれたこの邸宅ミュージアムで最後の展示となる「光―呼吸 時をすくう5人」を始め、過去の写真展を振り返ろう。原美術館は東京国立博物館本館などを手がけた建築家・渡辺仁の設計により1938年私邸として建造され、1979年私立現代美術館として開館。近年では、蜷川実花、篠山紀信、ソフィ・カルなど多くの著名作家の展示を行なっており、都会で自然とアートの融合を体感できる数少ない美術館でもある。
品川の原美術館42年の歴史に幕 - 「光―呼吸 時をすくう5人」展
2021年1月11日(月)をもって閉館する品川・原美術館の最後の展示となる「光―呼吸 時をすくう5人」展が、9月19日(金)に開幕。
出品作家は今井智己、城戸保、佐藤時啓、佐藤雅晴、リー・キットの5名。写真表現やアニメーション、インスタレーションといったさまざまな表現で、そこにある時間や空間に光をあて、自身を取り巻く社会の息遣いをかたちにし続けている作家たち。先が見えない現在の社会の中で、それぞれの立ち位置から社会を考え、見る者の心に深く語りかける作品を紹介する。
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020-さまよえるニッポンの私」展 レクチャーパフォーマンスも上演
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020-さまよえるニッポンの私」展が、今年1月25日(土)から6月7日(日)が当美術館で開催された。
名画や映画の登場人物あるいは歴史上の人物に自らが扮するセルフポートレイト作品で知られる森村は、巧みなメイクや衣装で、時代や人種、性別を超えてさまざまな人物に自らが成り代わり、制作を通して原作やその背景に独自の解釈を加えてきた。
本展では、自らが脚本を手がけ自演する映像作品「エゴオブスクラ」と、作家自身によるレクチャーパフォーマンスを通じて、日本近現代史、文化史に言及した。そうすることで森村は、愛情のみでは語りつくせない母国への複雑な感情をにじませながら「さまよえるニッポンの私」とは何かを模索する。
失恋体験による痛みとその治癒を作品化、ソフィ・カル「限局性激痛」展
世界的に注目されるフランスの女性現代美術作家、ソフィ・カルの作品展「限局性激痛」は2019年1月5日(土)から3月28日(木)まで開催された。本展は19年前に同美術館で開催され、大きな反響を呼び、同時に全出品作品がコレクションに加えられた「限局性激痛」展をフルスケールで楽しめる再現展となる。
「限局性激痛」とは、医学用語で身体部位を襲う限局性の鋭い痛みや苦しみを意味し、カル自身の失恋体験による痛みとその治癒を、写真と文章で作品化したものである。自身の人生をさらけ出し、他人の人生に向き合うカルの制作に多くの鑑賞者が心を打たれることだろう。しかし一方で、カルの作品には常に虚か実か判然としない曖昧さが漂い、全てを素直に信じることの危うさも問題にしている。
世界の優れた現代美術作品が集結「原俊夫による原美術館コレクション展」
1979年日本における現代美術館の先駆けとして開館して以来、1950年代以降の巨匠から今日の第一線で活躍する若手作家まで、世界の優れた現代美術作品を幅広く収集してきた原美術館。本展覧会は創立者・現館長である原俊夫がひとつひとつ丹念に収集した1950年代以降の絵画、立体、写真、 映像、インスタレーションなど所蔵作品約1000点の中から、原が初めて自ら選び、キュレーションするコレクション展「現代美術に魅せられてー原俊夫による原美術館コレクション展」である。
各作品を通して、約40年にわたる原美術館の活動の一端が垣間見える。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。