2023年ももう12月。あと一カ月を切った。今年もIMA ONLINEではさまざまなアートフォト周り活躍する写真家を取材した。若手ありヴェテランあり、アートとファッションを横断する年の瀬に振り返りたい今年前半のインタヴュー記事をまとめた。
独自の“ストリートフォト”が注目を集めるオランダ人若手作家サラ・ファン・ライ インタヴュー
オランダ人写真家サラ・ファン・ライが、ニューヨーク、パリ、ハバナ、ソウルなどさまざまな都市のストリートで切り取った日常の断片はある種の永遠性を感じさせる。ノスタルジックな要素が現代的な表現と出会い、見る者をどこか見慣れた、夢のような場所に誘うのだ。独自の視覚的言語はパーソナルワークに限らず、『New York Times』のエディトリアルワークやエルメス、トッズ、ジャックムスのファッションキャンペーンなどのコマーシャルワークでも見受けられる。今回のインタヴューでファン・ライは、創作の原点やストリートでの撮影、刺激的な今後の展開について話してくれた。
原美樹子×倉石信乃 対談「生活者のまなざしがとらえた小さな神話」
2022年、写真家、原美樹子による1996年から2021年までの未発表写真を収録した『Small Myths』がChose Communeより刊行された。妻でもあり、母でもある原は生活者の視点を持ち、日常生活の中で目の前を通り過ぎる人々の一瞬をとらえる。原によるささやかな言葉も綴られた本書は、誰にでも起きているであろう瑣末な出来事を「小さな神話」としてまとめた1冊である。ここでは、刊行記念の個展を開催した吉祥寺の写真集専門店book obscuraの店主である黒﨑由衣が進行役を務め、長年原の写真を見てきた倉石信乃との対談を通して、社会も写真も大きな変化を遂げた25年間も変わらぬ姿勢で写真を撮り続けた原の魅力に迫る。
パトリック・ツァイ インタヴュー「後悔」とユーモアでつづる自画像
6年ぶりに写真集『セルフポートレート』を出版したパトリック・ツァイ。『モダン・タイムス』や『My Little Dead Dick』などで見せたフォトダイアリーの手法から一転した今作は、一見インタビュー映像をキャプチャーした画像のように見えるスティル写真で構成された「セルフポートレイト」となっている。本作は「バトルシップ」「シャオヘイ」「ウェス・アンダーソン」「チャチビ」「決定的瞬間」「最低限のマナー」「長いお別れ」の7つの章(エピソード)で構成されており、全体のテーマである「後悔」についてさまざまな側面から語っている。ツァイは一筋縄ではいかない「ビデオの中の写真」というイメージの曖昧さや、写真に付された字幕で語られるエピソードなど、作品のいたるところに散りばめられたユーモアでアーティストとしての新たな一面を拓いている。制作のきっかけや作品に込められた思いを聞いた。
岡田舞子インタヴュー、新作「The sound of the wind」が探求する、イメージであふれる現代において「見る」ということ
これまでも日常生活の気づきを起点に、その問いの本質に迫る作品を制作してきた岡田舞子。4月13日(木)まで、東京・銀座にあるソニーイメージングギャラリーで展示している新作「The sound of the wind」では、純粋に美しい景色を追い求め、現代社会において見ること、そして撮影することとは何かというストレートな問いに向き合う。ここでは、作品が生まれた経緯やプロセス、タイトルにある「風の音」という、目には見えない要素の役割などを尋ねてみた。
木村和平インタヴュー続けていくことで進化する「石と桃」とは?
繊細な刹那を切り取り、感覚的な意識を写す写真家、木村和平による個展「石と桃」が、飯田橋、Rollにて4月22日(土)まで開催している。パーソナルワークとして長期間にわたって取り組んでいるこのシリーズ「石と桃」は、幼少期から体験してきた幻覚症状である不思議の国のアリス症候群を題材に、さまざまな額装や素材、異なるサイズの写真作品を介したインスタレーションである。昨年開催した展示をアップデートするかたちで、同タイトルの展示を同じスペースで行なっている木村に、心境の変化や作品を通して感覚を共有することについて話を聞いた。
絵画と写真を行き来する写真家ジュリア・ヘッタ インタヴュー
(左)Julia Hetta for Carcy Magazine(右)Julia Hetta for Re-Edition MagazineともにPhoto: Julia Hetta / Art + Commerce
その絵画的写真表現はクラシカルでもありコンテンポラリーでもある。フォトグラファー、ジュリア・ヘッタの写真は光と影が織りなす絵画だ。ファッション誌や広告で活躍するヘッタは、毎年話題となるファッションイベント「MET GALA」のカタログを撮影した。2023年のテーマはファッション界の皇帝、故カール・ラガーフェルド。巨匠が残したモードをフィルムに収めた。ヘッタのクリエイティヴィティとは?