東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=森屋恵美(Shelfオーナー)
近年、欧米の写真ファンの間で日本の写真への関心が高まっていますが、スペインのバレンシアにあるボンバス・ジェンズ・アートセンターでは今年の2月から来年2月まで、50年代から70年代の日本の写真家に焦点をあてた展覧会が開催されています。ボンバス・ジェンズ・アートセンターはもともと工場の一部として1930年代に建てられたアールデコ様式の建物を数年前に修復して作られた美術館です。収蔵作品はプライベートコレクションで、今回の展覧会も「海外での最も重要な日本写真のプライベートコレクション」と自負する作品群のなかからセレクトして構成しています。そのカタログとして出版された本書ではVIVOのメンバーであった東松照明、奈良原一高、細江英公、川田喜久治、佐藤明、プロヴォークに関わった中平卓馬、森山大道、高梨豊らに加え、荒木経惟、榎倉康二、西村多美子、濱谷浩らの作品や写真集、プロヴォークの誌面などを取り上げています。派手な作りではないですが、当時の写真集の紹介や写真集史年表なども丹念に掲載されています。
タイトル | 『The Gaze of Things. Japanese Photography in the Context of Provoke』 |
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出版社 | lafabrica |
価格 | 6,120円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ハードカバー/220mm×280mm/92ページ |
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ケイト・モスをモデルにしたカルバン・クライン「オブセッション」の広告写真でブレイクして以来、第一線で活躍を続けるファッション・フォトグラファー、マリオ・ソレンティ。イタリア人写真家のソレンティが1990年代のサンクトペテルブルクでのフォトセッションで、二人の美しいファッションモデル撮った一連の作品です。雪に閉ざされた一室の退廃的なシチュエーションとざらっとした質感の画質が、普段のマリオ・ソレンティの写真とはちょっと違った雰囲気を感じさせます。モデルと写真家の間の感情的なつながりから生まれた作品を特集していく「モレナ」というシリーズの第5弾として出版されました。
タイトル | マリオ・ソレンティ『Mario Sorrenti with Magdalena Frackowiak and Guinere Van Seenus』 |
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出版社 | morena |
価格 | 4,167円+tax |
発行年 | 2018年 |
仕様 | 塩ビ製ジャケット付きソフトカバー/330mm×250mm/60ページ |
URL |
まさかこんなに早く、こんなに次々と出版されると思っていなかった「鳥」写真コレクション・シリーズの続報です(2月のおすすめ写真集参照)。しかも今回はヨーローッパ大陸を越え、アメリカの人気写真家テリ・ワイフェンバックが選ばれました。長年にわたりワシントンDCの自宅の庭から、豊かなイメージを紡ぎ出し続けるテリ。庭の主役である植物とそこに集まる昆虫が作る空気感をとらえたイメージに、小さいけれど活発な侵入者が加わることで様相は一変します。聞くところによれば彼女のバックヤードはほんの小さな空間だということですが、そこに無限に広がるかのようなファンタジックな世界を見出すテリはとても素敵だと思います。
今回出版されたもう1冊は『Tokyo Parrots』で都会の鳥をテーマとした水谷吉法の写真集です。白黒でスタートしたシリーズが一気にカラフルになりました。
タイトル | テリ・ワイフェンバック『Des oiseaux』 |
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出版社 | EDITIONS XAVIER BARRAL |
価格 | 6,500円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ハードカバー/260mm×210mm/96ページ |
URL |
Shelf
外苑前にあるブックショップ。写真集を中心とした洋書を専門に取り扱っており、店内には希少な本から絶版書までさまざまなジャンルの写真集が所狭しと並べられている。
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-7-4
tel / fax: 03-3405-7889
http://www.shelf.ne.jp/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。