Age of Photon / Taro Karibe 展覧会「INCIDENTS」

IMA galleryでは、Age of Photon / Taro Karibe 展覧会「INCIDENTS」を開催いたします。

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「INCIDENTS」(2020)© Taro Karibe

「INCIDENTS」(2020)© Taro Karibe

IMA galleryでは、気鋭のフォトグラファー苅部太郎による作品「INCIDENTS」を展示いたします。計11点からなるこのシリーズからセレクトし、紙にプリントされた作品4点と同時に、全作品を光子によるまったく新しいモニターを用いたインスタレーションで、新たな写真表現の可能性を探ります。

デジタルTVの液晶モニタの画面のノイズをカメラでとらえた作品が、再び光子モニタに映し出されるという入れ子構造の展示を通して、そのテクスチャーの違いがビジュアルにもたらすものの意味や効果をリアルに体感していただけるでしょう。

今回の苅部の展示で用いる「フォトニックフィルム」(光子膜)は、中国・深圳に2015年に創業したスタートアップ「Holo Kook」(Shenzhen Guangke Holographic Technology Co. Ltd.)が開発した、新時代のモニターです。

プロジェクターから投射した映像を日中や屋外でも鮮明に映し出すことを可能とする「フォトニックフィルム」は、世界に先駆けて同社がパテントを持つ「光子結晶化技術」によって実現したもので、これまでどうしても技術的制約や製品的な制約によって、自由を阻害されてきた「メディアアート的表現」を拡張する可能性を秘めています。

今回は、自然光に近い環境のなかでも鮮明に映像を映し出せる「フォトニックフィルム」の特性を活かし、フィジカルのプリント作品とプロジェクションによる作品を同じ空間のなかで等価に扱うことで、デジタルテレビのグリッチノイズをフィジカルな”写真”へと変換することで、デジタルとフィジカルの境界を批評的に融解してみせた苅部の「INCIDENTS」という作品に、さらにひとつ変換を加えることを試みます。

この「フォトニックフィルム」は、深圳のHolo Kook社とゆかりをもつ元WIRED編集長・若林恵がコンテンツディレクターを務める黒鳥社を通じて、日本のアート空間において初めて紹介される事例となります。

IMA gallery
協力:黒鳥社

▼作家ステートメント
空間軸と時間軸が混線し、劣化したイメージ群。またTVが映し出す画一的で整合性が取れた物語から自由になった、あるがままにそこにある小さな世界の断片。そこから何かを確信して読み解くことはできず、もし読み解けたとしても、ルビンの壷のように反転し続ける図と地の間のせめぎ合いから、絶対的な真実はすり抜けていきます。リアルタイムに流れるデジタルTV放送にグリッチを発生させ、画面を有機生物のように埋め尽くすノイズをザッピングしてとらえ、そうして得られた画像を回転・トリミングして元のコンテクストを破断する作業の中で、それぞれのヴィジュアルが持っていた本来の意味は失われ、世界に対する一義的な説明は、白い紙の上に滲んだ黒いインクのロールシャッハテストのごとく失われています。その行為はまるで、デジタル信号で抽象絵画的な織物を偶発性にまかせて編むようなものでした。不完全性、非論理性、混沌は、デジタル的な合理性や一貫性が強く求められる現代、特にマスメディアで排除されがちです。それでも私は、信じているほど継ぎ目が鮮明でなく、複数のリアリティが人それぞれに同時併存するような曖昧な世界を眺めていて、ふと居心地の良さを感じるのです。

タイトル

Age of Photon / Taro Karibe 展覧会「INCIDENTS」

会期

2020年1月24日(金)~2月8日(土)

時間

11:00~19:00

会場

IMA gallery(東京都)

休廊日

日曜・祝日

入場料

無料

イベント

2月8日(土)15:00~17:00「苅部太郎×若林恵(黒鳥社)ギャラリートーク&クロージングパーティ」*参加費無料

苅部太郎|Taro Karibe
1988年愛知県生まれ。南山大学人文学部心理人間学科卒業。在学中に英国留学・南アフリカ共和国で国際NGOの感染症コントロール計画で研修。卒業後、金融機関勤務。2015年に写真家として独立。「自他を仕切る境界の曖昧性」、「世界の偶有性」を軸に写真作品を制作している。作品は国際的に高く評価され、ニューヨークタイムズやワシントンポストをはじめ国内外のさまざまな雑誌に作品が掲載されている。

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