激動の時代においても、世の中を光で照らすのは若者たちのエネルギー。ここでは「YOUTH」をテーマに、現代社会の礎を築いた大人たちがまだ若者だったときをとらえた写真集から、テクノロジーが進化したいまだからこそ生まれた本まで、2020年のうちに見返したい5冊をピックアップしてみた。
橋口譲二『We have no place to be: 1980-1982』(Session Press、2020年)80年代の“路上の若者”の姿
橋口譲二の代表作『俺たち、どこにもいられない 荒れる世界の十代』(草思社、1982)の新装版が、約40年という時を経てニューヨークを拠点とする出版社Session Pressから刊行された。作者自身が監修・編集し、2色刷りのマットニス加工印刷を施した贅沢な印刷。未発表作品30点以上を含むモノクロ写真139点を収録した256ページにおよぶ大作からは、当時の若者たちのエネルギーや臨場感がありありと伝わってくる。
ニール・ドラブル『Book of Roy』(MACK、2019年)アメリカンティーンへの憧れ
イギリスを拠点に活動する写真家ニール・ドラブルが、1998年から2005年にかけてロイというアメリカ人の少年が青年へと成長していく過程をとらえた1冊。決定的瞬間はあえて描写せず、少年の取るに足らない日々の変化にフォーカスし、見る者を思春期の真っただ中にいるような気持ちにさせる。ドラブルは、ロイの成長を記録すると同時に、陰鬱な1970年代のマンチェスターでアメリカのテレビ番組を見て育った彼自身が憧れていたティーンの姿を彼に重ねているのだ。
コリエ・ショア『Paul’s Book』(MACK、2019年)モデルの身体と写真家の視線が交わす会話
コリエ・ショアが、フランス人の美しい少年を親密な距離感で2年間にわたり撮影した本作は、若さとは何なのか?というシンプルな問いを突きつける。被写体はショアとの他愛もない対話をしながら心と体を解放していく。年を重ねた者たちも、かつては持っていた瑞々しい肉体。ショアは被写体とのコラボレーションを深めていきながら、被写体が体現する若さと、若さの本質である“過去”を描き出す。
ヴァレリー・フィリップス『I had a dream you married a boy』(私家版、2020年)ステイホームしながら撮影した新時代の写真集
魅力あふれるちょっと変わった女の子を撮らせたら、ヴァレリー・フィリップスの右に出るものはいないのでは?ロンドンを拠点とするフィリップスは、今年初めにストックホルムに住む少女・アルヴィダと撮影旅行を予定していたが、パンデミックによって中止を余儀なくされた。そこでふたりは、オンライン上でSkypeやFaceTimeを使った撮影を敢行。柔軟でポジティブな発想によって生まれた写真集は、ぜひチェックしておきたい。
ビリー・サリヴァン『Still, Looking. Works 1969-2016』(Edition Patrick Frey、2019年)1970年代のニューヨークをとらえたユニークな記録
1970年代初頭よりニューヨークのアンダーグラウンドシーンやアート、ファッションシーンを撮影し、その写真をもとに油絵やドローイング、インスタレーション作品を発表してきたサリヴァン。写真のみならず、さまざまな作品を収録した本書は、視覚的なサリヴァンの自伝でもあり、自由奔放なニューヨークのドキュメンタリーでもある1冊。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。