「浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA」が、長野県御代田町を舞台に9月3日(日)まで開催中。ここでは、参加作家の中で過去にIMA ONLINEでフィーチャーした作家たちの記事をまとめて紹介する。フェスに足を運ぶ前に事前チェックすれば、より現地での写真鑑賞を楽しめるはず! 既にフェスに行かれた方は、気になった作家をさらに深掘りできるコンテンツをお見逃しなく。
濱田祐史
ハナ・ウィタカー
Blue Bubble, 2018
一見フォトショップで操作された、モンタージュのように見えるグラフィカルな作品を生み出すハナ・ウィタカー。展示中の〈Ursula〉は全て、特殊効果のある照明、特注した小道具や衣装、イメージをプリントした背景などを綿密にセッティングし、スタジオで撮影された写真である。ウィタカーはさまざまな照明技術を使って、デジタル加工が当たり前となった現代における写真のあり方に混乱を生み出そうと試みた。IMA vol.26でアトリエに訪問し行ったインタヴューを読んで、その制作の背景を掘り下げてみよう。
マックス・ピンカース & ヴィクトリア・ゴンザレス・フィゲラス
Supplementing the Pause with a Distraction
マックス・ピンカース(1988年、ベルギー出身)とヴィクトリア・ゴンザレス=フィゲラス(1988年、カナダ出身)は、ドキュメンタリー写真を用いたプロジェクトの共同制作を行う。展示作品の〈Double Reward〉は、1938年から2009年にかけて、雑誌『National Geographic』の写真家たちが、赤をはっきりと濃く表現するのが特徴であるコダックのカラーフィルムを使って、赤い服や小道具を身につけた白人たちが異国を眺める姿を絵葉書のようにとらえた写真群である。マックス・ピンカースは、IMA vol.5のシャーロット・コットンの連載「PHOTOGRAPHERS’ FILE」にて紹介された。
柿本ケンサク
© FEEL KIYOMIZUDERA
2005年に⻑編映画『COLORS』を制作し、映像作家としてこれまで数多くの映画やMV、CMなどを手掛け、写真家として活動する柿本ケンサク。本展では、コロナ以前に撮影した数千枚に及ぶ写真を、任意のテキストや歴史的な情報と、自身で撮影した画像・映像作品を学習させたAIに再現像させた〈Time Tunnel〉シリーズと、車MAZDA2のために制作された新作〈Trimming〉が展示されている。〈Trimming〉は、鑑賞者がMAZDA2の前に立つと足元に光が現れて両者を接続し、立つ位置に合わせて車体と壁面に198のイメージがランダムに投影される作品で、見る人の歩く軌跡によって音が合成され、イメージと音のオリジナルな組み合わせが生まれる。2022年、京都の清水寺で行われた展示「柿本ケンサク写真展-TIME-音羽山清水寺」についてのインタヴューをチェックしてみよう。
ジュリー・コックバーン
Glade 2018 Hand embroidery on found photograph © Julie Cockburn, Courtesy of Hopstreet Gallery
ファウンドフォトや印刷物、絵画に刺繍やペイントなどの手仕事を施すことで新たな価値を与え、アート作品へと昇華するジュリー・コックバーン。今回の展示作品は、2014年から2021年の間に制作したさまざまなポートレイト作品である。IMA vol.28では、コックバーンのアトリエを訪問し、制作の裏側を掘り下げた。
クリスト&アンドリュー
2022 © ChristtoAndrew, Welcome to 2022, 2022
クリスチャン・サンチェス・ディアス(1985年、プエルトリコ生まれ)とアンドリュー・ジェイ・ウィア(1987年、南アフリカ生まれ)による、2012年に結成されたアーティストデュオ。写真、インスタレーション、映像などをメディアを用いて、歴史、政治、経済、ポップカルチャー、そして社会的規範の構造がもたらす日常生活への影響を、さまざまな色やシュールなスティルライフなどを使って表現している。2013年から2022年に制作された複数のシリーズからセレクトした写真作品を展示中。今月のIMAGRAPHYでも紹介された。
ニコ・クリジノ
ON HOW TO LEAVE YOUR BODY BEHIND
ステージドフォト、コラージュなど多様な技法を用いて、現代社会におけるイメージのあり方を考察するニコ・クリジノ。ケープタウン郊外の人里離れた農場で家族と暮らしながら、飽くなき視覚表現への探究心と豊かな想像力で、プレイフルな世界を描き出す。本展では、2020年から2022年に制作された〈Collage〉が巨大なオクタルミナに展示されている。過去にIMAGRAPHYで取り上げた作品を見てみよう。
リュウ・イカ
リュウ・イカは、写真を通して他者とのコミュニケーションを図りながら「写真とは何か」を模索し続けている写真家である。展示作品の〈Untitled〉では家族との思い出を起点に、記憶にあるのに写真には残っていないもの、逆に記憶にはないのに写真に残っているものを洗い出し、写真に残る記録と自身の記憶に生じるズレを提示する。イカが撮った写真、母親が撮ったイカの写真、母親の昔の姿が収められた写真をミックスして展示中。IMA vol.35で行ったインタヴューを読んで、彼女の制作に向き合う姿勢を知ってみてほしい。
苅部太郎
心理学や哲学思想を背景にしつつ、写真や映像という視覚情報伝達メディアを通して、現代人がどのように現実を認識しているかを探求する苅部太郎。本展では、複数の画像生成AIと、作家と株式会社アマナの3DCGクリエイティブによるデジタルヒューマンのポートレイト作品〈Via Negativa〉を展示している。2018年、「LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #6」に参加した苅部へのインタヴューはこちら。
岡田舞子
日常生活の中での気づきを起点に、独自の手法でその問いの本質に迫る作品を発表してきた岡田舞子。今回は、ラッシュアワーの混雑した電車の中から外の景色を見ていた岡田が、マンションの明かりにふとカメラを向けたのがきっかけとなったシリーズ〈Cell〉を展示している。「LUMIX MEETS BEYOND 2020 by Japanese Photographers #7」に参加した際のインタヴューを読んで、作品への理解を深めよう。
大谷臣史
日本で陶芸作家として活動したのちオランダにわたり、現在はロッテルダムを拠点に活動する大谷臣史。日本からヨーロッパへ輸出された文化に興味を持ったことでスタートした、コスプレに焦点を当てたプロジェクト〈Temporary Heroes〉では、ヨーロッパにおけるコスプレイヤーの独特の「妥協感」をとらえ、彼らの「闇」に迫っている。2018年に刊行した写真集『Statues in the Netherlands(Standbeelden in Nederland)』にまつわるインタヴューはこちら。
濵本奏
主に人やもの、土地が持つ「記憶」をテーマに、壊れたカメラを用いたり、ミクストメディア的な手法で制作、発表を行う。本展では実体を持たない儚い亡霊のようなランドスケープとポートレイトで構成されたシリーズ〈midday ghost〉を展示中だ。IMA vol.35で行ったインタヴューでは、夢や生活の中で紡がれた言葉や体験、心情などをインスピレーション源にする制作の話を聞いた。
タイトル | 「浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA」 |
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会期 | 2023年7月15日(土)~9月3日(日) |
会場 | MMoP(モップ)周辺(〒389-0207 長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1) |
時間 | 10:00~17:00(屋内展示は最終入場16:30まで) |
定休日 | 水曜(8月16日を除く) |
入場料 | 1,000円(一部建物のみ有料、中学生以下無料) |
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